2008年 05月 01日
不純な動機
【4月29日 AFP】多数の動植物を絶滅から救えず「生物多様性」が失われることになった場合、新世代の抗生物質の開発が行き詰まり感染症やガンの治療の未来が閉ざされることになるとの専門家の報告が、23日に発表された。
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(c)AFP/Martin Abbugao
これは以前にも、どこかで見かけた訴えだな、と思いつつ。
1980年代の後半から90年代初頭にかけて、
世界の原生林に対して行われている商業伐採の問題が
盛んに取り上げられていた頃も、
このようなことは(それほど大きくはないけれども)もちろん言われていた。
当時 言われていたことは、
地球表面の数パーセントの面積を占めるに過ぎない熱帯林において、
全生物種の約半数を数えることができること、
また抗生物質の、これもまた約半数が熱帯の生物由来のもので、
工業製品でもなんでもないこと、
(よく勘違いしているヒトがいるけれども、薬の多くは自然物由来である)
という指摘。
これはもちろん科学的にも動かしがたい事実。
で、
それだけ豊かな生態系を育んでいる熱帯林が失われてしまえば、
将来薬になるかもしれない植物やその他林産物や動物といった希少生物を、
発見の前に失ってしまうのではないか
……ということは、もう20年以上前
(自分が知っている限りにおいてだから、
さらにそのもっと前から言われていたかもしれない)
から明らかなことであった。
まあ、このテーマだけに絞った本が出るというのは
恐らくほとんど無かったと思うので、
その意味ではいい問題提起になるものとは思う。
医療の専門家が噛んでいるのであれば、尚のこと。
◆ ◆ ◆
たぶん小学校か、せいぜい中学で習うと思うのだが、
生態系ピラミッドという、食物連鎖をわかりやすく図にしたものがある。
どのような生物種であっても、
ものを食べることで生きている存在である以上、
この生態系ピラミッドの中に含まれる。
そこから外れる存在はない。
命あるものはかならず、
ある存在からは食べられ(または分解され)、
あるいは他の命あるものを食らわなければ、
この地球上で生きながらえることはできない。
それは、ニンゲンも同じこと。
理科や生物の授業などで習う生態系ピラミッドの図に
ニンゲンが入っている図というものは
滅多にみかけないのだが、
(見たことのあるヒトは情報宜しくです) ※1
実はニンゲンだってちゃんとそこに含まれている。
生きものではない食べものだけを食べること
で生き続けることのできるニンゲンなんて
一人もいないのだ。
◆ ◆ ◆
ある種が絶滅してしまうということは、
食う・食われるというこの生態系ピラミッドのピースの一欠片が
永遠に失われるということである。
欠片の喪失が少なければまだ多少は持ち堪えたとしても、
失われるものが増えると
やがてはピラミッドそのものが崩壊する。
もちろん、この生態系ピラミッドは
全ての生物種が関わっているものであるから、
どこか遠くの、
ジンルイにほとんど知られていない何らかの種が絶滅したとしても、
それが巡り巡ってジンルイにまで影響を及ぼす、
ということもまた起こりうる。
この写真記事が取り上げているのは薬品・医療関係に絞った問題提起だが、
食べものだけではなく、
薬のような命の危機や体調管理に関するセーフティー・アイテムについても、
同じことが言える。
(薬草を使うのは何もニンゲンだけではない。
他の生物も食糧以外の用途で他生物を利用することある)
また、別の角度からの影響もある。
森林伐採が進んだことでマラリア蚊が人里にまで広まった、という例も
(絶滅かどうかは別として)あるように、
そこに他の生物種が存在してくれていたおかげで食い止められていた
災害や疫病のようなマイナスの要素が増大する、
ということも起きてくる。
そう考えた場合、
自分の、あるいはジンルイの安全保障という面からも、
種の多様性(生物多様性)の保全や環境破壊問題への取り組みというのは、
意味があるのだ。
◆ ◆ ◆
もちろん、森林にしてもまたそこに生きる野生生物にしても、
存在していること、そのものは価値があるのだと思う。
けれども、そうした価値観を抜きにしても、
「自分が生き延びるために」
野生生物保護に取り組んでみたり、
原生林保護活動に参加してみたり、というのは
家の頭金作りのために残業して働くのと、ある意味地続きでもあるのだ。
ものすごく判りづらいし見えづらいかもしれないけれども。
ここで動機の純・不純を問うという行為は、
今まさに絶滅に瀕している動植物の当事者にしてみたら、
ほとんど意味のないことだと思う。
その動植物を保護したいという動機が、
・その対象物が好きだから(美しいから・可愛いから・価値があるからetc.)
というような精神論だけではなく、
・その対象物を保護・保全することで経済的な価値を生むから
・その対象物を保護・保全することで
ニンゲンの生存に関する安全保障が高まるから
であっても、
絶滅の淵から生還できるのであれば、
こんなに意味のあることはない。
むしろ、動植物の保全活動なるものは、
「オランウータンがかわいそう」「ガラパゴスゾウガメはかっこいい」
というような視野が狭窄した動物ヲタク(自分のことだ)や、
「希少種はそれだけで存在する意義が高い」
「命あるものは命があるということに意味がある」
というような哲学的な観点からものを語れる人びとだけが
やるもんでもなかろう。
誰もがめぐり巡って関係しているのが、生物界というものなのだから。
もっと、利己的でもいい。
もちろん、利己的とはいえ、
地球は別にニンゲンのものでもなんでもないのだし、
ましてや他の生物種を所有しているわけでもないので、
そこんところさえ勘違いしなければ、
という点を踏まえてのことだが。 ※2
※:ニンゲンの入っている生態系ピラミッドを滅多に見かけない理由は、きっと「ジンルイが多すぎるから」だと思う。それは、生態系ピラミッドの頂点に近い生物種は数が多すぎると生態系のバランスを崩す、という生態系ピラミッドの根本を突く提起になってしまうというのもあるし、あとはただ単純に美的なデザインに収められないから、ということもあると思う。
※2:同時に、その「利己的」の中身を問い続けていくこともまた必要かもしれない。
※3:2年前にも同じようなエントリを上げていた。
→絶滅の「何が」問題か http://www.actiblog.com/yamaneko/3990
.
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登録日:2008年 05月 01日 23:28:27
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