許可の根拠はどこにある?

政府公認、天然記念物の「ワニの料理」が大人気 - 中国

【黄山/中国 1日 AFP】中国東部の安徽省の観光地である黄山では、好奇心旺盛な観光客をあてこんだ天然記念物のワニの肉が、レストランで供されている。政府の許可も得ているという。29日付け北京モーニングポスト(Beijing Morning Post)紙によると、ワニ肉の細切り、ワニ肉のスープ、ギョウザのセットで1440元(約2万1250円)で、観光客の間では大人気だという。ちなみに使用されている中国ワニは、中国の第1級天然記念物に指定されているという。写真は黄山のレストランで28日、ワニのおかしら付きの大皿料理を運ぶウェイトレス。(c)AFP

AFPBB News


食べられているのは、どうもヨウスコウワニ(揚子江ワニ)らしい。

んで。
なんで絶滅危惧種であるヨウスコウワニを
食べることができるのか。

恐らく、
ともかく何でもいいから観光収入がほしい、というのが
大まかな動機だとは思うのだが。

だいたい、これまでの中国政府の環境対策を見るにつけ、
ヨウスコウワニが絶滅危惧種であっても、
それを無視してこうした行為を認めることは、充分ありうる。


◆ ◆ ◆

改めて調べてみたのだが、
絶滅の危機に瀕したヨウスコウワニについては
中国国内でも人工的な孵化や飼育を行い、
そうした人工飼育下のものが
8000なり9000なりの数を超えているという。
(数が不確定なのは、これらのネタ元の情報が
3、4年くらい前のものばかりと半端に古いため。
最近のデータは見つけられなかった)


この食用ワニの出所が、
そうした人工的に増やしたものから回しているのか、
あるいはそれ用に捕獲を行っているのかどうかまでは
情報を追えなかったが。


◆ ◆ ◆

とはいえこれ、増えているのは「人工飼育下」だけのこと。

じゃあ、それらの個体を自然へ復帰させるようなプロジェクトが
あるのかどうかというと、
かなーり調べたがそうした話はまるで見られない。
この写真のような、食べる話はあっても、だ。


出てくるのは、このワニの本来の棲み処である
揚子江(長江)の環境悪化の話ばかり。

このことについては、もはや一般常識的な段階だろうと思う。
たとえば、三峡ダム開発による環境破壊にしても、
工場排水の垂れ流しの話にしても、
少しの間 環境関連ニュースを見ていれば
よく取り上げられるトピックスと化している。
(たとえば11月24日のyahoo! ニュースサイトのこの記事など
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061124-00000032-rcdc-cn)
このAFPでも、中国の環境悪化の話は何度も登場している。
http://www.afpbb.com/article/1119073
http://www.afpbb.com/article/872034 
http://www.afpbb.com/article/608247
http://www.afpbb.com/article/606901

つまりは、人工的に数が回復したとしても、
 ヨウスコウワニたちには還ることのできる故郷があるのか? 
というわけだ。


◆ ◆ ◆

こうした状態を無視して、単純に
「数も増えてきたことだし、旅の記念にゲテ食いしても……」
という発想を持ったとしたら、
思考回路が相当おめでたいヒトなんじゃないか、と素で思う。

ワニの棲み処を汚染し、生息域を狭める一方で、
その対処にはほとんど着手せず、
(人工的に)増やした分は観光資源として消費する。
これ、そうした構造のハナシにしか、見えないんだが。

.
.
今回のAFPの記事のトーンについてなのだが、
単なる事情説明に留まっていて、
妙な分析を挟まないという点に関しては
「事実をそのまま伝えているだけ」のニュースのように見える。
が、
中国の環境面の問題点を全く考慮しないでこのトーンで読み解くと、
単なる観光の誘いにしかなっていない。※1

普段は中国の環境悪化がやれの、
絶滅種がどうの、
http://www.afpbb.com/article/1096471
と言っている同じメディアが、
片方で
こうした観光案内のような無神経な宣伝を報道と称して流すのは、
クラウザーさん(※2)の歌じゃないが、とってもグロテスクだとしか
言いようがない。


※1:ちなみにyahoo!でも同様の報道あり。こっちはもっと能天気。
12月1日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061201-00000018-rcdc-cn

※2:巷で流行りのまんが『デトロイト・メタル・シティ』(白泉社)の主人公の別名(というか、こっちが本名のような気がする)。クラウザーさんのバンドの楽曲に『グロテスク』という曲がある、ということで今回ご登場いただいた。

カテゴリー[ 絶滅危惧種 ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2006年 12月 10日 23:48:47

コメント

中国ではヨウスコウアリゲーターの保護にも力を入れてますよ。
ヨウスコウアリゲーターは野生個体の捕獲は禁じられてますし、保護区では捕獲が禁じられているのはもちろん繁殖個体の放流もされてます。
そもそも「げてものぐい」ではなくヨウスコウアリゲーターはもともと古くから食用として用いられていました。
世界各地でもワニは食用としてもちいられることはめずらしいことではありません。
世界各国、生息域ではわりとポピュラーな食材です。
肉は淡泊でクセがなく、また血液中の免疫能力が高く肉はとても清潔なのです。

黒子 @ 2007年 04月 19日 20:33:59

黒子さんようこそ。お返事遅れて失礼しました。(ご訪問に気づくのに遅れ、しかも少し熟孝の時間も必要でしたので)

ご指摘の、保護の件について。中国政府が保護にも取り組んでいることは知っていますし、上のエントリでも触れています。でも、保護をしている、だから食ってもいい、というのが理由になるのか? という疑問は、そのまま提示し続けたいと思います。

また、エントリが昨年(2006年)のものでありその当時の情報に基づいていましたので、この件について多少情報が足りない状態でしたが、ご指摘の放流の情報については1件だけですが探し出すことができました。
 http://japanese.cri.cn/151/2007/01/26/1@84864.htm
今年(2007年)の1月26日の記事です。
とはいっても、放流そのものは今年・2007年中に始める予定であること、しかもまだ実験段階とのこと。それに何より、数が少なすぎます。野性で1000匹、4桁を目標というのは(生存数全体では飼育数も入れて1万ちょい)、やはりヨウスコウワニについてはもっとデリケートに扱わねばならない種であるとしか言いようがありません。
肝心の揚子江(長江)そのものの環境問題についても、相変わらず新しい汚染や環境破壊の話がしょっちゅう飛び込んでくる状態です。
たとえば、こちらなど(毎日新聞4月17日)。
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20070417ddm003030142000c.html

また、当ブログで「ゲテ食い」としましたのは、これはAFPの記事にしろyahoo!の記事にしろ、それが旅行者に対してのアピールでしかないからです。地元で元々食されていた、食文化の回復、というトーンではなく、あきらかに旅行者を対象に、「珍しいモンを食う」ことを呼び込んでいるわけです。
文化的に価値観が高いのであれば、まずは観光客よりも地元の人びとを優先するのが筋ではないでしょうか、これは。
文化理解、多文化交流、ということで外部のニンゲンを優先している、というのであれば、もう少し記事のトーンも違うものに……たとえば、ワニを食べる話だけではなく他の文化交流の紹介も列記されているなど……という記事の構成になるでしょう。

管理人の個人的な考えとしても、またこのブログの方針としても、基本的には食文化の尊重については非常に重視していますし、いわゆる欧米的価値観が当然であるという風潮そのものは問題視していきたいと考えています。
とはいえ、数が減っている種(ワニ類のほとんどがそう)のことを考えた場合、個人的にも当ブログとしても、食文化の伝統よりも生物種の保存を優先して考えるべきであるという結論にゆきつかざるをえません。
こと、ヨウスコウワニについて、以下のような記事を読んでしまうと、生息環境の改善と共に、その数を増やすことをまずは先決して欲しい、と思います。
ご参照いただけると幸いです。
http://www.peoplechina.com.cn/maindoc/html/teji/200202/teji200202.htm
この中の特集1の後半にある張金栄さんのくだりが、当該箇所になります。

管理人(山猫通信社) @ 2007年 04月 24日 21:19:28

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◆環境カウンセラー兼フリーランスのライター・編集業の「山猫通信社」については、上のHPをぽちっとどうぞ。ブログをみてのご連絡は、sorano_ki@yahoo.co.jpへ。
◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
◆トラックバック、どうも故障中の模様(早く直してくれAFP)。
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