森の香りをかいできた
【シュツットガルト/ドイツ 14日 AFP】現在ヨーロッパ・ツアーを敢行している英国人ロックシンガーのスティング(Sting)が12日、Beethovensaalでライブを行った。写真はパフォーマンスを披露するスティング。(c)AFP/DDP/MICHAEL LATZ
その昔、スティングが
アマゾンの森林保護のキャンペーンをやっていたことを、
今、どのくらいのニホンジンが知っているんだろうか。
に、しても、このリュート(?)はどんな音色を奏でるのやら。
すげー聴きたい。
と、いう前振りはさておき、遅くなったが
先週7日に行われた催し「森にあるのは、木だけじゃない!」の
感想をつらつらと。
この日の(知的)収穫としては、
・「香道」はニホンの文化的財産
・サラワクの先住民族はその昔サイを食っていた。しかも
美味かったらしい。
という辺りだろうか。
これが一体どう結びつくのか、
というハナシが、今日のエントリ。
◆ ◆ ◆
ちなみにこの日は2部構成。
前半が、主催団体であるニホンの環境NGO、
サラワクキャンペーン委員会(SCC)
http://www.kiwi-us.com/~scc/
による熱帯林に暮らす先住民族の文化の紹介と、
その背後に忍び寄る環境破壊の問題の提示。
そして後半が、
神戸女学院大学の人間化学科で「お香」を研究している
金沢謙太郎さんの講演。
会場ではお香を楽しみながら、
そのお香もまた熱帯の林産物であり、
環境破壊に伴って入手が難しくなってきている、ということを、
大学の先生らしからぬ分かりやすさで巧みに紹介。
◆ ◆ ◆
さて、前半の先住民族の文化についての話。
の、前に。
その背景情報を、ちょっと補足する。
マレーシア国は、
マレー半島側の領土と、海を越えた島のボルネオ島、
その島の北側 約3分の1ほどの領土とからなる。
(ボルネオ島の南の三分の二はインドネシア領;
この国境線が決まったのは、
昔の欧米列強の植民地支配の名残でもある)
今回話の中心となっている「先住民族」としては、
後者、ボルネオ島に暮らす人びとを主に取り上げている。
ここの先住民族にもいろいろな民族がいるが、
その中でも狩猟採集の文化を持つ「プナン人」が、
今回の主人公だ。
ところでこのマレーシア、
半島側はもとより、このボルネオ島側もまた
熱帯林がじゃんじゃん伐られている。
おかげで、本来の原生の熱帯林は随分と減ってしまった。
今回の主人公、プナン人は
狩猟採集によって暮らしを立てているから、
原生林がないと生活ができない。
森林破壊が進んだことで、
プナンたちの生活も大きく変わってきた。
◆ ◆ ◆
森で狩猟を行い、林産物を糧として生きるプナン人たち。
熱帯の森の歴史とともに脈々と続く、プナン人の文化。
熱帯林が消滅の危機にさらされている今、森林とともに
人びとの文化もまた、共に失われてしまう可能性が高い。
ということで、SCCは、
プナン民族に伝わる伝説や昔からの暮らしぶりについて、
古老に話をうかがい、それをビデオ等に記録・保存している。
(これは、大学の研究ではなく、
民間のNGO団体として行っているもの。
有志が自分の財布から持ち出しをし続けながら
記録づくりをしている。
ビデオ代はもとより、翻訳などの手間も、全部がボランティアだ)
会場で見せてもらったビデオのプナン人たちは、
外見がとてもとても、ニホンジンと似ていた。
ニホンの田舎にいるようなおっちゃんが、
民族にまつわる神話的なストーリィを
プナンの言葉で淡々と語っていた。
(ビデオは日本語吹き替え版;これもボランティアによる)
この日見たのは、地名の由来や、タブーの話、
昔のデートスポットのいわれなど。
ほかにも、生活の細やかなあれこれが記録されているという。
一部だけを見て判断するのもアレだが、
素朴で、なかなか面白い。
先住民族の人権云々を抜きにして、
神話やら民俗学的なストーリィ好きの人びとは、これ、
収集に嵌りそうなシチュエーションでもある。
むしろ、文化人類学など文化的素養のある人の方が
楽しめそうな取り組みだと思う。
たとえば、大塚英志辺りが好きな人なんかだと、
非常に親和性がありそうだ。
その中で、出てきたのが冒頭に上げた「サイの話」。
SCCのインタビュアーが、
森の減少ともにいなくなっていったサイについて
知っていることを教えてくれ、と水を向けると、
とあるプナン人の古老が
「昔はサイも狩ったし、子どもの時分には食ったことがあるぞ」
と答えてくれたのだ。
なんでも、サイはやはり、美味いらしい。
アジアのサイは
アフリカ大陸のサイと比べると多少は小さいとは思うが、
それでもやはり、サイである。
ボルネオの生きものの中ではかなり大きいもののはずだ。
狩りの獲物としてみても、とても貴重だろう。
サイを仕留めたときには、村中大喜びで分け合ったそうだ。
(サラワクの先住民族の場合、
多くがこの「分かち合い」をごく当たり前のこととして行っている
ということがよく話に出る。
プナンに限らず、他の農耕少数民族たちも同様だ)
しかしどうも、その古老を除いては、
実際にサイを食ったことのあるプナン人はいないという。
古老にしても、自分が大人になって狩りをする頃には
もうサイを仕留めることは叶わず、
それどころか、姿を見ることもまれとなり、
よくて足跡を見ることくらいしかなくなっていた、
という話で終わった。
そうか~、プナン人はサイ、食っとったんかー!(昔は)
と、しみじみしている場合ではない。
サイを見ることは、今はもうほとんどないのだから。
SCCは、元々は森林破壊の阻止と、
森林とともに蔑ろにされる先住民族(プナンだけでなく)の
人権面での支援を主目的に活動をしてきた。
そして、プナン人の文化的側面を記録することで、
移動狩猟民であるプナン人の、土地の登記を助けて
土地の権利を確保し、
そこから森林伐採を止めようという狙いもあって、
この活動を続けている。
しかし、遠回りな手法ということ、また翻訳にしろ取材にしろ、
手間も金もかかるので、なかなか大変、ということもまた事実。
しかしこれ、ふつーに面白い。
今までに聞いたことのない物語の収集、としての面白さ。
ニホンのサブカルやオタク文化界隈に溢れている
似たり寄ったりの話の繰り返しに飽きているのであれば、
かなり新鮮に映る、と思う。
学術的に文化人類学などを齧ったことのある人がいたら、
その手法をいろいろと活かせる活動でもある。
そうした方には、ちょいとオススメしたい作業だ。
◆ ◆ ◆
続いて、「お香」の話である。
今、巷で人気(たぶん)のお香、である。
会場にお香の一つである「沈香」がたかれ、
ゆったりとした雰囲気の中、話がはじまった。
沈香とは、沈香木という種類の木の樹脂で出来ている。
これを熱することで、その香りを楽しむ、というものだ。
それにしても、なんでお香が熱帯と関係があるか、というと、
なんてことはない、お香、中でも沈香の元となる沈香木は、
基本的には
サラワクなど熱帯の森の中でしか生息できない種類の樹木で、
そこから採る沈香は実は貴重な林産物なんだよ、
ということで、話はきちんとつながっている。
このお香の歴史だが、
それこそ西暦の数字が3桁の、うんと昔の時代から
中国経由でニホンにもやってきていた。
それが、ニホンで華道や茶道のように「香道」として
文化的に高められていったことを、
資料や写真でサクサクと解説していく。
着物を着たきれーなねーちゃんがお香をたしなんでいる写真は、
なるほど、何気にに文化的な趣があった。
ちなみにこの沈香、21世紀の現在、
ちょっといいものになると、1グラムで12,600円もする。
つまりは、そうした相当ハイソな趣味でもあるこのお香が、
今、バンバンと失われつつある熱帯林からやってきている、
ということだ。
森林の状態が好ましくない現在、
当然、お香にもその影響は出ている。
沈香の質も量も、森の悪化に影響されて、
かつてに比べてだいぶ悪化しているという。
原生林が保全されているところの沈香と、
二次林の沈香、などなど
採取環境についていろいろな条件で比べると、
やはり原生林からのものの方が圧倒的に質が高い、
良いお香だそうだ。
しかし、伐採やプランテーションへの転換などで、
原生林の状況は悪くなる一方。
当然、採れる量も質も、あまり芳しくないのが現状だ。
じゃあ、沈香の安定的な採取をどう確保するか、
という点については、
業界の方向性としても、どちらかというと
森林をどう保全するかという本質的な話に目を向けるよりも
人工的な栽培技術でなんとかしよう、みたいな方向に
目がいきがち、らしい。
もっともその場合、天然のものと比べて質的な面で劣るのは
避けられないという。※
幸い、会場には、
そうは考えていないお香業界の方が何人か参加されており、
しかもその中の一人の方は、実際に
沈香の採れる現地へと訪れている。
(実はこの「現地」、相当に奥地で、
とてもじゃないが気軽に訪問できるような場所ではない)
そのときの、大変かつ面白い旅の話も少し聴けたのだが、
時間がないためだいぶ端折られたのは少々残念。
これは、次の機会を待ちたいところ。
ところで。
この「現地」こそ、先のプナン人のフィールド。
実際に現地で沈香を採取しているのがプナン人、というワケ。
ちなみにこの沈香、
プナン人の貴重な現金収入源の一つともなっている。
(ああ、やっと話が全部きちんとつながった)
◆ ◆ ◆
もうひとつ講師の金沢さんの話で印象深かったのは、
熱帯林の減少が言われる前までを振り返ると、
ジンルイには
熱帯から、この沈香をはじめさまざまな林産物を採取し、
活用してきた歴史がある、という指摘。
沈香に関して言えば、
たとえば12世紀の中国の資料の写真なども
見せていただいた。
一方、熱帯の森を「木材」としてのみ見なして、
コンパネやらなんやらに使う歴史なんて、
ほんこの数十年ほどのこと。
だのに、実際に森林が減少している理由は、
この「木材」としての利用が主目的だったりする。
(現在ではそれに加え、
伐採の跡地を造成して植林・プランテーション化し
単一作物を大量に生産する場として
人工的に死んだ森を作り出している;サイアクだ)
沈香をはじめ、
これまでの長い歴史の中で
ヒトが採取し、活用してきた多種多様な林産物は、
今の時代のわたし・たちには、ほとんど目に映っていない。
このコントラスト、アンバランスさを考えると
本質的に「何を変えなければいけないか」という答えが
見えてくると思うのだが。
さて。
※:事実として、まだまだ沈香木についても、沈香についても、その全てが科学的に解明されているわけではない。どうやって沈香木から沈香が生成されるのか、まだまだヒトが理解していない、未知の部分があるという。
(3月17日追記:
本文に一部抜けがあったりしたので、言い回し等も含め少し訂正・加筆しています。失礼お許しをば)
.
.
カテゴリー[ 森林 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2007年 03月 15日 19:44:58
コメントを追加
Trackback
この記事に対するトラックバックURL:
- プロフィール
- 山猫通信社 篠宮
- 山猫通信社
- カメでも読める のてのて環境ニュースクリップ
- このメモは猫のヒゲ
- ◆環境カウンセラー兼フリーランスのライター・編集業の「山猫通信社」については、上のHPをぽちっとどうぞ。ブログをみてのご連絡は、sorano_ki@yahoo.co.jpへ。
◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
◆トラックバック、どうも故障中の模様(早く直してくれAFP)。
- 最近のエントリー
- [12/31] 2008年の終わりに
- [12/24] 虹の記憶08、秋~冬
- [12/23] 目を背けるために取り組みをする。または取り組んでいるふりをする
- [12/23] ぼちぼち復帰(たぶん)
- [11/24] 簡単なお知らせ、ナドナド
- [11/23] 虹の記録、08.07末~09
- [11/22] ただ商売がしたいだけ。
- [11/21] 孫たちに「カメなんて見たことがない」と言わせないために
- [11/07] いいかげん、「倫理」や「正義」で口論してても、本質には辿りつけない。そんな気がする。
- [10/28] 空飛ぶペンギン(←嘘
- 最近のコメント
- [10/18] えらく情報の足りないものを持ち出して、何が言いたいのやら ネット旅人
- [10/08] 在来種を駆逐する外来ヒキガエル あ
- [06/15] 一人一日26キロ出してます。 グリーン
- [04/09] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 中村透信者
- [02/16] 多くのヒトはどうしてモテ・非モテのような話題が好きなのか(いーかげん うんざりなんだがな) プク
- [02/15] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 toripan
- [01/25] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 toripan
- [12/31] 波力発電について調べてみた コンタクト
- [12/24] 波力発電について調べてみた 雲英
- [11/19] いいかげん、「倫理」や「正義」で口論してても、本質には辿りつけない。そんな気がする。 コト
- 最近のトラックバック
- 月別アーカイブ
- 2008年 12月 [4]
- 2008年 11月 [5]
- 2008年 10月 [9]
- 2008年 09月 [8]
- 2008年 08月 [4]
- 2008年 07月 [4]
- 2008年 06月 [4]
- 2008年 05月 [9]
- 2008年 04月 [9]
- 2008年 03月 [16]
- 2008年 02月 [19]
- 2008年 01月 [22]
- 2007年 12月 [14]
- 2007年 11月 [11]
- 2007年 10月 [11]
- 2007年 09月 [16]
- 2007年 08月 [18]
- 2007年 07月 [11]
- 2007年 06月 [12]
- 2007年 05月 [20]
- 2007年 04月 [19]
- 2007年 03月 [22]
- 2007年 02月 [20]
- 2007年 01月 [16]
- 2006年 12月 [21]
- 2006年 11月 [25]
- 2006年 10月 [24]
- 2006年 09月 [21]
- 2006年 08月 [19]
- 2006年 07月 [27]
- 2006年 06月 [27]
- 2006年 05月 [21]
- 2006年 04月 [17]
- 2006年 03月 [29]
- 2006年 02月 [11]
- 検索