「ブラッド・ダイヤモンド」は政治的に正しい映画、か?
1つのダイヤ、3つの願い、そして100カラットの感動 - 東京
【東京 12日 AFP BB News】見たこともないほど巨大なピンク・ダイヤモンド。
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試写会に当たって先日観てきたので、
つらつらと感想を綴ってみる。
多大なるネタバレあり。
既に観た人、
あるいは
この映画を観ないと決めている人向けのエントリなので、
これからこの映画を観ようという方は
当エントリのパスを推奨。
で、
無料で観せてもらってこういうのもナンだが、
これは、
表題にあげたような「政治的に正しい」映画、というよりも
政治的なネタを正しくスパイスに使った娯楽映画だ、
というのが視聴した自分の結論だったりする。
んで、その話をしていきたいと思う。
ただし、娯楽だからといって悪い出来の映画ではない。
娯楽作品としての最低限のクオリティを維持しているので、
(特に役者たちの演技がとても良い)
下で自分が述べるようなことが気にならない人であれば、
問題なく楽しめる内容となっている、と思う。
◆ ◆ ◆
主役級の登場人物が3人いる。
欧米へ移住したいと願うアフリカ生まれの白人
(ディカプリオ扮するアーチャー)
家族との再会のために生き抜く地元の黒人
(ジャイモン・フンスー扮するソロモン)
に、ジャーナリストの西洋人女性
(ジェニファー・コネリー扮するマディ)
といった組み合わせ。
この3人が、
ある意味アフリカの地域紛争を支えているとも言える
ダイヤモンドにそれぞれ魅せられながらも翻弄されつつ
旅を繰り広げる、といった内容。
アフリカで産出されるダイヤが
地域紛争の武器弾薬の資金となっていることは、
別にこの映画の中の架空の設定ではない。
この点が今の時代の事実を背景にした話であるということは、
この映画の宣伝等からかなりの人が理解していることと思う。
し、
その問題提起そのものは、
大手資本のダイヤ業界を敵に回すという意味において、
相応に頑張っている……と思う。たぶん。
◆ ◆ ◆
物語の中で一番評価したいのが、フンスーの演じたソロモン。
んでもって、その魅力が一番出ていないのも、
作中のソロモンという人物。
ソロモンは、実直で平凡な漁民なのだが、
彼は、話の最初から最後まで、
ほとんど受け身の状態が続く。
自分から能動的に状況を変えていくような行動は、
ほとんど取らない。
というか、取りたくても取れない。
切り札であるダイヤの行方を洩らさないという決断を除けば、
最初から最後までほぼアーチャーに助けられっぱなし。
もちろん、アフリカの田舎でのんびり漁業をやっていた人物が、
いきなり武器弾薬が雨あられと降ってくる状況に陥ったら、
能動的に行動せよ、といっても、無駄なことは分かっている。
に、しても。
無力な被害者には自助能力がない、というような
ステレオタイプな描き方は
いいかげん古くないか、これ。
しかも、その役割を担っているのが、また黒人かよ、
というような。
映画内のソロモンという人物のキャラ的な好感度と
それを演じたフンスーの演技のクオリティの高さを考えると、
黒人は常に白人の援助で何とかなっている、という図式を
描かせるのはいい加減やめた方がいいような気がする。
さて。
そうした無力な人が自ら手を汚すことないかわりに、
(といっても実は物語の最後の方で一人殺めている。
この台本は正直止めてほしかった)
殺した殺されたというような場面において手を汚す役割を
一身に背負いつつ、
映画の中ではアーチャー(白人)がガンガン活躍する。
悪党どもをガンガン殺し続けながら。
まあ、役者がディカプリオだから、活躍しないことには、
映画の興業的に困る、というのもあるんだが。
アーチャーのこの映画での位置づけは、
辛い過去を持つ若者、といったところ。
元々は傭兵であったことから、武器弾薬の扱いから
修羅場の切り抜け方まで、彼が物語のほとんどを左右する。
役者としてのディカプリオは、
荒んでいながらもなぜか憎めないヤツ「アーチャー」を好演。
ただ、人物造形として、
アーチャーの幼少時の辛い過去という部分が、
背景説明以上の深さを持っていない、というのが惜しい。
特に作品の中盤、
ソロモンの息子がゲリラ側に誘拐され、
少年兵として洗脳されてしまう、という
まるでアーチャーの過去をなぞるような運命を辿るのだが、
そことのリンクが描写として弱い。
3人めのキーパーソン、マディだが、
彼女は意外と物語を動かさない。
物語の途中で1、2度ほどソロモンやアーチャーを助け、
アーチャーとはロマンスも描かれるのだが、
最後にソロモンをサポートする役割を除くと
なんだかとってつけたような感じが否めない。
ジェニファー・コネリーといういい役者を使いながら、
ちょっともったいない感じ。
別にアーチャーとは恋に落ちなくてもいいから
(ストーリー上はそれでも充分に整合性が持てる。
普通の友人で助け合った、という感じでも違和感は全くない)
ジャーナリズムの欺瞞や
女性が一人で世界を渡っていく苦労など、
もっと違った角度で切り込んでいった方が
フェミニズム的(ようわからんが たぶん)には面白くなったと思う。 ※
とはいえ、この映画ということで限ってみれば、
アーチャーとソロモンの微妙な関係、
というのが結構いい味になっていたので、
その分マディが割りを食ったとも言えそうだ。
◆ ◆ ◆
映画ではなく、
リアルのアフリカの紛争でもう一つ言われていることが、
先に出てきた少年兵の問題。
映画ではソロモンの息子が少年兵として洗脳され、
父親を憎むまでの洗脳がなされた、というのだが、
フィクションだと分かっていても
これらのシーンは観ていて辛かった。
少年兵問題について考えるきっかけにするのであれば、
こうした問題提起は良かったかもしれない。
けれども。
物語的にどうかというか、
終盤近くでのシーンがそこにちょっとばかり水をさしている。
映画では、ソロモンの息子と一緒にさらわれ
一緒に少年兵にされた子どもたちがいるのだが、
その少年兵たちを、
いくら戦闘の混乱の真っ最中とはいえ、
アーチャーが殺してしまうってのはどうかと。
実はその場面、アーチャーは
ソロモンの息子を救い出してもいるのだ。
息子にしてみたら、仲間の少年兵を殺した男に保護されて、
しかも父親がそいつと仲間っぽく振舞っていたら、どう思うか。
さらにその後、クライマックスで、
息子は父親であるソロモンに銃を向けることになるのだが、
そこで、父親の息子への愛情によって息子の洗脳が解け、
危機は回避された、という流れになるのが
安易すぎ。
隣に仲間を殺したアーチャーがいるんだぜ。
リアルの世界にある少年兵問題からみると、
脱洗脳がこんな簡単にいきますかいな、
という感じがしてならないんだが。
少年兵問題について取り組む人がみたら、
少年兵たちの心理的なケアという点で
どういうツッコミをいれるのか、
ぜひともききたい部分のひとつ。
実はこのシーンに至る前に、主役の3人が、
かつて少年兵であった少年少女を厚生させている
ボランティアの施設に1、2日ほどやっかいになるという
シーンがあった。
なかなか心温まるシーンなのだが、
(ちなみにソロモンだけは少年少女たちに混じって遊んでいた、
という絵もあった)
たかだか1、2日そういう体験をしたところで、
あの実直だが器用さに欠けるソロモンが、
息子の洗脳を解けるとは、とてもじゃないが思えない。
画面上でも、そうしたスキルを発揮したわけではない。
ここについては、物語の整合性やカタルシスを優先した、
というしかなさそうだ。
物語の都合ということでいえば、
終盤、ソロモンの家族が全て助かり、安全な場所で
ソロモンと再会できる、というのも
ちょっとというか結構なご都合主義。
とはいえ、それまで苦労を重ねてきた正直者のソロモンに
相応の幸せが回復されるという点においては、
物語の後味を良くしてくれる最大のポイントでもあったので、
これは観る人によって評価が分かれる、というかたぶん
多くの人はこういう最後を望むと思うことを考えると
こうしたのも致し方ないのかな、という気がする。
歯切れが悪い言い方でナンだが。
◆ ◆ ◆
けなしてばっかなのもなんなので、
気に入ったシーンを幾つか紹介。
冒頭の幸せそうな家族のシーンは、無条件に良い。
ただし映画の必要性から、このシーンは短い。
物語の中盤、
複数の海外メディア(ほとんどが白人だ)が
共同でチャーターしたバスにこの3人も乗り込むのだが、
ソロモンはそこで「カメラマン」だと嘘をつくように言われる。
実直なソロモンは、そのことに抵抗があって戸惑う、
というシーンは、
ソロモンの人柄を上手に描いていて、なかなか良い。
特にそれまで、アーチャーに助けられっぱなしで、
ソロモンの良い描写が少なかったので、尚。
このバスが、途中、ゲリラの襲撃を受けた村を通りがかる。
大怪我をした娘を抱き抱えて泣き叫ぶ母親を、
海外メディアたちは(マディも含めて)
助けるのではなく、まず先に写真を撮りまくる。
それを、怪訝そうな、信じられないという顔で見つめるソロモン。
ソロモンにそうした視点を持たせることで、
欧米のメディアの持つ視線の暴力性を描かせたところは、
ややありがちな展開だけれども、上手い。
続くシーン。その場にゲリラの追撃が行われ、
バスの一行が慌てて逃げ出すところで、
ソロモンが実に当り前にその怪我をした娘とその母親を
バスに乗せようとする。
これは、かなり良い。
ソロモンがごく自然にそう動いた、という描写が無理なく
描かれている。
この映画の中で、自分が一番好きなシーンだ。
あとは物語というよりも、その他の項目かもしれないが。
火薬の量はかなり派手に使っているので、
迫力は充分。
ただ、その分、物語上、
「コイツ死ななくてもよかったんじゃね?」的な
無駄な死が増えたんじゃないか、という気がしなくもないが。
アノヒトとかアノヒトとかアノヒトとか。
それと、個人的には
アーチャーの傭兵時代の上司であった「大佐」の
チープな悪役っぽいのはツボ。
本当のラスボスがありがちでちょっと萎えだったので、余計。
もひとつ、音楽(オープニングとエンドロール)の歌が、
ユッスー・ンドール、ってのが最高。
しかも、いかにもユッスー、という使い方ではなく、
嫌味にならない引いた使い方をしているのが、
ユッスーのファンとしても膝を叩いた。
ま、ユッスーはセネガル人だし。
んで、相変わらずの美声は見事。
◆ ◆ ◆
とりあえず、山猫屋的まとめとして、次のような感じかと。
・善良だが無力な黒人と、それを助ける知恵も力もある白人、というよくある図式に則って映画が作られているところが、萎え。
・ただしメインの3人の演技力は良い。イメージもそれぞれ嵌っている。
・色恋が一応はあるが、その描写が少なくウザくなってない点は良。全部なければもっと良かった。
・物語の整合性や視聴者のカタルシス重視で、リアリティのいくつかは犠牲にされている。特に、少年兵の洗脳が解けるシーンや、ソロモンの家族だけが幸運にも合流できる結末などは、ちょっとなぁ、と。
そういう意味では、冒頭に述べた通り、
社会問題を考える為の映画というよりも、
社会問題を題材にして作った、アクション娯楽大作、
という捉え方が正しいのではないか、ということで。
※:と、ここまで書いて、ふと想像。もしも主役3人を全部アフリカ系のキャラで描いていたとしたら、ひょっとしたらもっと面白いストーリーになったかもしれない。少なくとも、そこまで徹底すれば、政治的には正しい映画、となりそうだ。特に、マディを「欧米国籍の教養もある黒人女性ジャーナリスト」にしていたら、ぐっと物語が引き締まる。黒人女性でなくても。有色人種のマディ。うん、カッコ良い。もっとも、興業的にはコケるだろうが。
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登録日:2007年 04月 24日 22:43:09
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