何をもって「持続的発展」とするのか

大統領 アマゾン雨林の開発目指す法令に署名 - ブラジル

【ブラジリア/ブラジル 3日 AFP】ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は2日ブラジリア(Brasilia)で、国有林地区の持続的発展を促進する法令に署名した。法令は、アマゾン雨林への外国資本誘致が目的。写真は、署名後に演説するダシルバ大統領。(c)AFP/Evaristo SA

AFPBB News


はじめこの記事を見たときに、
「なんと馬鹿なことを!」
と、思わず叫びそうになった。

何かの芝居みたいな台詞だが、
心境はまさにこんな感じ。
.
.

◆守るの、伐るの、さあ、どっち?◆

と、いうような二者択一でないことを祈りたいのだが。


AFPの以下の2月16日のニュース
http://www.afpbb.com/index.php?module=DetailArticle&action=Index&article_id=324519
の写真記事と併せて見ていただきたいのだが、
実は先月2月14日、ブラジル大統領は
森林保護を目的とした大統領令に署名をしたばかり。
ちなみにこの大統領令の内容は、
アマゾン川流域地区の640万ヘクタールに森林保護区を設け、
うち160万ヘクタールを永久保護区とし、
伐採や森林破壊から守るため、
保護措置として完全立ち入り禁止区域とするという
話だったのだが。


それが、一月足らず、というか
2週間かそこらで、まるで手のひらを返すような、この決定。
一部は保護をするが、残りの森林は……といった意味なのか。
あるいは保護という名目から拡大解釈をしていくのか。
あるいは、単にアリバイづくりとでも言うべき
作業だったのだろうか。
実に怪しい。


◆悪い先例ばかりが目に付くのは、気のせいか?◆

環境保護と開発は必ずしも相反するものではない、と言える場合も、
まぁ無くはないが、(※1)
この場合は、やはり首を傾げざるをえない。
保護を謳ったその直後に
また開発にお墨付きを与えるようなことを言うとは。

現実的な問題として、
持続的発展、というお題目を掲げたところで、
結局は融資を引き出すことが最優先のはずだから、
どこまで「持続性」を優先するかは実に大きな疑問だ(※2)。


これまで外貨獲得・経済的な利益を得るために、
自国の自然環境への保護の手を緩めたり無視したりする国の例は、
枚挙にいとまがない。
これは、俗に途上国と言われる国だけの話とは限らない。
カナダやオーストラリア、ロシアなどといった国ですら、
経済的効果を優先して自国の森を伐り払い、
原生林をはじめ貴重な自然を失っても別に構わない、
という方針を選択しているほどだ。


まあ、そこには土地の利用権等が複雑に絡むこともあるので、
私企業や地主などの責任も大きい。なので、
国家ばかりを責めるのは
別の意味で問題を見誤る可能性もあることは、
同時に指摘をしておく。


ちなみにアジア各国の場合、
1970年代はフィリピンが、
80年代には、インドネシアやマレーシアが、
90年代にはマレーシアのほかにパプアニューギニアなどが、
それぞれ自国の大地に生えている樹々を木材としてのみ見做し、
切り払って金に換えたが、
それを一番多く購入したのは
ニホンだったりする。
先のフィリピンの災害の原因のひとつに森林が脆弱だったことが
可能性として挙げられているが、
あの遠因はひょっとしたらニホンのこの豊かな暮らし、
である可能性だって、決して否定できない。


◆本当に「それ」は必要なのか◆

さて。アマゾンはどうか。

航空写真などで見覚えのある人も多いだろうが、
アマゾンの森、これ以上伐ってしまったら
もうヤバいんじゃねーの?
ってなくらいに伐採道路が通ってしまっていたりする。

これ以上、さらにどうやって
アマゾンに海外資本を呼び込もうというのか。

実はアマゾンの場合、
露天掘り鉱山など、地下資源が結構豊富にあることから、
その方向性で進むのではないかと見ている。
し、資源開発であれば、資本の誘致もしやすい。
ちなみにニホンも、鉄鉱石輸入の約22%がブラジルからのものだ。
森林を伐ってそれを資源として売る、あるいは
昔よく言われた牧場として開拓し牛肉づくりに、という方法よりも、
こちらの路線の方が公算が高いだろう。

このほかに、想像したくない、しかしあり得る可能性としては、
パルプ原料となる樹種の植林プランテーション、乃至は
アブラヤシプランテーションといった農業開発。
これは、鉱山開発に勝るとも劣らない
最悪の環境破壊の手段となり得るものたちだ。

この部分については、今後も調べて随時情報を追加していく。


◆本当に持続が可能かどうか、きちんと検証しているのか?◆

何より、
持続が可能な森林のあり方とは一体どういうものなのか。

その検証、どこまできちんと
科学的に行われているものなのだろうか。

たとえばある地域の環境に悪影響(インパクト)があった場合、
その地の環境復元においては時間軸が100年、200年といった
長い概念での修復が前提となる例が多い。
そのため、その科学的な検証は往々にして難しいものとなる。

今回のブラジル・アマゾンの事例に限らず、
多くの環境破壊の現場で浮かび上がってくる根本的な疑問は
これだ。

とりわけ、アマゾンの森のように、
豊かに見えて実は繊細かつ複雑な生態系を基盤とする自然環境は、
一度失われると修復は非常に難しい。
種などの場合、絶滅してしまってからそれを
蘇らせることは、先進の科学技術をもってしても
到底不可能なことだ。


まさか、目先の金に目が眩んで、なんてことにならぬよう、
ここはきちんと釘を刺せるような、
科学的な裏づけがしっかりとほしいところ。

ニンゲンってやつは、自分に甘く、
且つ欲望には弱いイキモノなわけで、
その弱さに対する防止策を織り込んだ対策というものを
本来はきちんと構築していくのが
「持続可能」を言う側の
本来あるべき筋なんじゃあなかろうか。


※1:「そもそも開発がなぜ悪いのか」という意見があることは百も承知だが、ここではより声の弱い立場、生息地を追われる野生生物や、「発見」前に絶滅の憂き目を見るアマゾンの動植物をどう考えるか、という立ち位置を選択する。山猫通信社の見解としては、基本的には、「持続可能な開発」と公言されているものであっても、公正かつ科学的な裏づけが取れないものに関しては推進しない方針を推奨する(環境破壊面における、いわゆる予防原則)。
尚、開発そのものの問題性(一部の人間が肥え太るだけで貧富の差が拡大する、伝統文化の破壊が起こる、その上で環境も破壊される、等の)もあるが、ここではその点は触れずに自然の権利との関連性のみで論を展開する。

※2:たとえば、ミツユビナマケモノが持続できるような環境の保全については全力を挙げるが、まだ名前のよく分かっていないナントカカントカというアリの一種は絶滅しても構わない、といったような選別がなされていいのかどうか、といった優先順位の問題も当然含まれる。誰が、何を基準にして優先順位をつけるのか。その優先順位こそが「持続可能性」の内実であろう。

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登録日:2006年 03月 05日 21:44:24

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