なんかちょっと本質からビミョ~にズレている(ような気がする)

海底に無数の巨大鉄パイプ? 温暖化阻止の奇策

【9月29日 AFP】地球温暖化を阻止する方法として、英国の著名な研究者2人が、海底100~200メートルに最高数百万本にも及ぶ巨大な鉄パイプを垂直に設置することを26日、提言した。
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(c)AFP/Marlowe Hood

AFPBB News


こういう記事を取材する記者や写真家って、
どの程度この問題について知っているんだろう。

このAFPの報道以外にこの件についての情報が探し出せなかったのでナンだが、
少ない情報から推測してみる。


◆ ◆ ◆

この鉄パイプ云々を言うているジェームズ・ラブロックは、英国の有名な科学者。
名前は知らなくても、「ガイア仮説」(あるいはガイア理論とも)ということばならば、
聞いたことのあるヒトもいるだろう。
これを提唱したのがラブロックだ。
(もう一人の人については、よく知らないので、パス;すまん)

ガイア仮説とは、つまりはまあ「地球は生きている」というか、
地球のシステム全体を巨大なひとつの生命体と見なす考え方。
この考え方はエコロジー運動なんかにも影響を与えてきた。

ただこのラブロック、とりわけ最近になってから原発推進をバンバン言い出して
今は各国の環境派からはほとんど総スカン状態、らしい。
ニホンの反核団体からも、公開質問状が送られているくらいだ。


◆ ◆ ◆

まあ、そういったラブロック個人のことはさておき、
今回はこの写真記事の中で書かれていることを見ていきたい。

ここで提唱されている温暖化防止の方法とは、
>二酸化炭素を吸収し、空の雲の生成を媒介する硫化ジメチルを排出する能力を持つ藻類の成長力を回復させる方法
として、
>海水が一方通行するフラップ(ふた)をつけた直径約10メートルのパイプを、一定範囲で自由に移動できるよう鎖でつなぎ止めて海底に垂直に設置する
という手法だ。
ちなみに、硫化ジメチル云々のくだりは、
それによって雲の発生を増やし、雲に太陽光を反射させることで温暖化を防ぐ、
というもの。

だが。

まず一点め。
これは要するに、
 二酸化炭素の吸収源として木を植えよう、
という文言の「木」の部分が「藻類」になっているとも取れるわけだが、
植林の事例でも「温暖化防止を目的とする植林による環境破壊」があるように、 ※
「藻類」だけを無闇に増やしていいのかどうか、
藻類が増えた場合の海中の生態系、海中生物等がどのような影響を受けるのか、
その辺の配慮をどの程度行っての提言なのかが、よく分からない。


次に。
>直径約10メートルのパイプを、一定範囲で自由に移動できるよう鎖でつなぎ止めて海底に垂直に設置
とあるが、
そんなもん作るとしたら、
そのためのエネルギーがものすげー莫大なものになることは素人目にもわかる。
で、そのエネルギーの収支も勘定に入っているのか否か。
鉄鉱石を掘り出したり、それらを輸送したり精錬したり、
さらには出来上がったパイプを輸送して海中に打ち込むという、
それぞれの過程で
莫大な化石燃料の使用(と二酸化炭素等の温室効果ガスの排出)が
前提となるんだが、それ、大丈夫か。

また、そんなオブジェを海中に作ったとしたら、
その地域を回遊する海中の生きものたちに
どのような影響があるのか(あるいはないのか)、
そこのところをどこまで考えているのか。
海流が変わることによる多方面への影響はどうシミュレーションしているのか。
これもまた、不明な部分だ。


3つめとして。
>炭素排出抑制に対する国際的努力だけでは、地球の原状回復さえも十分にできない
という発言が本当だとして。

ここはインタビュアーのニュアンスの取り違え、
あるいは翻訳のニュアンス違いという可能性も含んで考えるべきかもしれないが、
排出抑制への努力は、たとえそれだけでは現状回復が難しいとしても、
そもそも根本の原因がそこにある以上、
こればかりは四の五の言わずに努力せにゃあかんことだろう。
他の努力とあわせて。

こういう言い方、本当にしたんかなぁ。
ここだけ、というか、この記事だけ、この結びだけ読むと、
排出抑制への努力に対する評価が非常に小さいように思えるのだが。

もっとも、原子力賛成という当人の思想背景を考えると、
何か困ったことがあればとにかく科学技術で解決すればいいんだ、
という科学万能主義の思想が根底にある可能性もあるので、
こうしたニュアンスで言ったのかもしれないなぁ、とも想像してしまう。
う~ん、どっちなんだ。


変な話、この部分だけを拡大解釈して、
 排出抑制はさておいて、技術的に頑張ればいいじゃん、
という考え方が、これを機会に主流になっていくのも、
環境配慮の面からはあまり好ましいこととは思えないんだが。
本質はほったらかしで対症療法だけやっているようなもんで。

※たとえばこのエントリとか。
 http://www.actiblog.com/yamaneko/29404

.

カテゴリー[ 地球温暖化 ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2007年 09月 30日 20:25:31

コメント

 どもどもです。
 ちゃんと日本語の記事になっているのをここで初めてみました。

 ラブロックは基本的にはもう間に合わない、派の科学者です。
「ラブロックの温暖化手遅れ説についてあなたもコメントを」
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/forum/
というところで紹介しています。

 クリス・ラプレーはつい最近まで英国南極観測隊の隊長をしていた人です。
事態に間に合うようなペースで排出削減策(プラス隔離策=CCS)を採ることはできないだろうという前提で、批判の多いジオエンジニアリングを実施しようということを提唱しているように思います。

最初はポンプのようなものを稼働させて深海から栄養分を吸い上げるという提案かと思っていましたが、それほど馬鹿馬鹿しいものではないようなので、検討価値はあるものかもしれません。

小倉 @ 2007年 10月 02日 20:44:34

小倉さん、情報どうもです。またもや大助かり。

>クリス・ラプレーはつい最近まで英国南極観測隊の隊長
なるほど。ラブロック同様、やはり「間に合わない」派なんでしょうね。まあ、協同で研究しているくらいですから。

ラブロックの個人的な考え方(間に合わない)は、自分個人としては正直どうでもいいんですが、もしも排出抑制とか根本原因への対処よりも技術で対応をすることを重視して、そういう流れを社会に作り出すことに噛んでいるのであれば、そこんところはやっぱオカシイよな、と。直径10メートルの鉄のパイプ云々といった発想を見ていると、でっかい原発作って発電したいぜ、というのと似た感覚を感じてしまって、ついうがった見方になってしまいます。
それに、海中の環境って、ジンルイにはまだまだ未知な部分が多いということなので、そこに半端な技術を放り込んで、予期せぬ反応があった場合に大丈夫なのか、というのもありますし。

管理人(山猫通信社) @ 2007年 10月 02日 23:43:03

ラプレーは最近科学博物館だかの館長になったはずです。
研究をしているというほどの関わりではないのだろうと思います。
専門はこちら。
「ハンセンが吠え、レントン、ラプレーが応える」
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/stopglobalwarming/11000.html

 最近のあちらの人たちの考えることをちゃんとフォローできていないというか、CCS(二酸化炭素の回収と地中隔離)にしても、まさか欧州で推進の機運が盛り上がるとは思いも寄らなかったですからねえ。
それだけ現状への危機感が高まっている指標だとみておく必要もあるのでしょう。
 ニューヨークタイムズにもこれについての評論記事が出ていました。
From Gaia to Geoengineering: A Radical Cure for Global Warming
http://tierneylab.blogs.nytimes.com/2007/10/01/from-gaia-to-geoengineering-a-radical-cure-for-global-warming/?hp
実際にいくつか実証試験するところまでは行く可能性があるということだろうと思います。

小倉 @ 2007年 10月 03日 11:19:32

おお、更なる情報のフォロー、ありがとうございました。

こちらもなんと、関連記事を発見。といっても、AFPと情報面での違いはないので、ただ単に日本語の記事があるよ、というだけなんですが。以下、貼り付けます(読売は記事のリンク切れが早いから。

9月29日 読売
深海水の栄養で藻類繁殖、CO2吸収…温暖化防止へ新構想
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070929i312.htm
 「ガイア理論」で有名な英国の生物物理学者ジェームズ・ラブロック博士らが、新しい地球温暖化防止策を考案し、27日付の英科学誌ネイチャー誌上で明らかにした。
 栄養価に富んだ深海の水をパイプで水面近くに吸い上げて藻類の繁殖を促し、より多くの二酸化炭素(CO2)を大気から吸収させようというユニークな構想だ。
 使用するパイプは、長さ100~200メートル、直径10メートルほどで、海中に垂直に浮かぶように設置。パイプの下部に開けた穴には弁をつけ、海面に向けて一方通行で海水が吹き上げる構造にする。海水の圧力だけで、大量の水を吸い上げる仕組みができるという。
 藻類は太陽光とCO2を材料に「光合成」を行い、繁殖する。しかし、太陽光が降り注ぐ海面近くは栄養価が低く、光合成がうまく進まない海域が多い。このため、博士らは、栄養価が高い深海の水をくみ上げることで、藻類のCO2吸収能力を高められると考えた。
 ラブロック博士が提唱したガイア理論は、地球と生物が相互に関係し合い環境が出来上がるという考え方。博士は「人間が温暖化防止策を示せなくても、地球の自浄能力に手を貸すことはできるはず」としている。
(2007年9月29日19時27分 読売新聞)

管理人(山猫通信社) @ 2007年 10月 05日 20:51:11

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