木さえ植えれば何でもエコか?

優雅なハクチョウも大あくび?

【2月21日 AFP】スロバキアの首都ブラチスラバ(Bratislava)で20日、湖を泳ぐハクチョウの姿が見られた。(c)AFP


AFPBB News


写真はぜんぜんお題とは無関係のハクチョウのアップ。
まるでpya! さんの写真のようにオモロイ。


さて。
今日取り上げたいのは、先月の報道にあったこの件について。

1月25日 日経エコロミー
偽装したパルプ分を植林――環境省、古紙対策で検討
 http://eco.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=2008012802813n2

まあ、内容はだいたい見出しの通りなんだけれども、こんなこと言ってる。
>偽装を行った製紙メーカーに対し、古紙と偽って配合した新しいパルプの量に相当する植林を求めるなどの対応策について検討を始めた。(以下略)
(※:記事本文は<続きを読む>に収納)

例の古紙配合率の偽装問題、
その落とし前を、「植林」で埋め合わせさせよう、というアイデア。
なのだが。

当ブログとしての問題提起は、お題にも上げたとおり。
と、いうか、まあこれまでも何度か話題にしてきているが。

それにしても、
ニホンジンって、植林というか、「園芸」が好き過ぎ。
エコ対策としてすぐに植林をしたがるという発想の、その根っこのどっかには、
この園芸好きの発想が入り込んでいるような気がしてならない。

木さえ植えれば環境配慮になる、というのもまた非常に乱暴な話で、
この環境省の言う「植林」がどこの土地で、どのような樹種を植林し、
それを誰が管理するのかというところまで具体的に考えていかなないと、
 木を植えた、しかし森は死んだ、
ということが起こらないとも限らない。

たとえば今ニホンの国土の67.4%が森林であり、
そのうちの4割が人工林なのだが、
その4割を占める人工林の多くには満足な人手が入っていない。 ※1
つまり植えっぱなしで面倒をみていないことから、
 ニホンの山林は荒れている、死んだ森が累々と広がっている、
というふうにさえ言われている。

自分のところの森の面倒も満足に見られないような国のニンゲンが、
さらに何を植林しようというのだろう。
多くの場合、
人工林というものは、最初に人為によって植えた以上、
その後もある程度はきちんと面倒をみないと
その地の環境を悪化させる危険性の方がずっと高い。
(もちろん植林の仕方、森の作り方にもよるが、
基本は「木の畑」のようなもんと考えた方がまだ間違う可能性が少ない)

ちなみに、ニホンの人工林は製紙原料には向かない樹種がメインだから、
この問題(製紙会社の偽装問題)に対する贖罪行動の対象としては
不向きであることは指摘しておく。
(ニホンの人工林問題は紙の問題と分けて考えるべきこと、という意味)

で、ハナシを元に戻すと、
製紙会社の偽装の贖罪としての植林って、
いったいどういう植林を考えているんだろうか。
別に、世界中すべての植林が悪いというような極端な話をする気はさらさらないが、
中には産業植林をいかにも環境配慮のものだといい含めている例が
あるのも事実。
製紙原料ではないが、ヤシ油を採るためのアブラヤシプランテーションなどは、
その分かりやすい例だ。
(とりあえず過去記事のこの例なんかを参考に;
 オランウータンが絶滅しても、わたしは二酸化炭素の排出量を減らしたいんです

製紙会社がかかわってきた場合、
さらに製紙原料になる樹種を、というような選択になる可能性を
どこまで無視できるのか。
たとえばインドネシアなどでは、上記のアブラヤシのほかに
そうした製紙原料向けの樹種の植林のハナシも聞くし、
あとはタスマニア(オーストラリア)での移入種・外来種となるユーカリの植林なども
報告されている。


まあ、環境省が上手く手綱を操ってくれるのであれば
ここまで露骨な産業植林とはならないだろう、とは思うのだが、
贖罪行動の前に、どのような原因でこのような事態(=偽装)が起こったのか、
という部分の解明すらまだおぼつかない状態であるということを
忘れてもらっちゃー困る。

2月22日 毎日
再生紙偽装:「調査は不十分」環境相が批判
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080222k0000e040032000c.html

贖罪行動の前に、再発防止と適正な流通(含む適正な生産)の回復、
責任者の処罰といったものの方が先だろう。
もともとの発端が、
古紙の高騰と品薄による入手の難しさだとか、技術面での課題だとか、
そういう部分に因るものが大きかったと考えられている以上は。

てか、やっぱり結論が
「ニホンジンは園芸が好きなんだよな」というオチでいいのか、これ。
(↑たぶんちがう)


※1:森林問題の基礎知識の参考になるサイト。実はこの原稿、自分の仕事(照。
 http://www.nou-taiken.net/atoz/agriculture/index.htm
ちなみに元となるデータ類はすべて『森林白書』ほか、ニホン政府の正式な統計データから起こしている。

.

<続きを読む>

1月25日 日経エコロミー
偽装したパルプ分を植林――環境省、古紙対策で検討
 http://eco.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=2008012802813n2
  環境省は25日、古紙配合率の偽装問題で、偽装を行った製紙メーカーに対し、古紙と偽って配合した新しいパルプの量に相当する植林を求めるなどの対応策について検討を始めた。
 市場に出回っている偽装された紙について「処分してしまえという乱暴な意見もある」(同省)ことを踏まえ、鴨下一郎環境相も同日午前の記者会見で「冷静な議論が必要。緊急避難的なことも考える必要がある」との方針を示した。
 環境省は、地球温暖化対策として世界的に普及している、二酸化炭素(CO2)を排出した事業者が植林や自然エネルギーの利用などで排出分を相殺する「カーボンオフセット」方式などを想定している。英国では、政府や企業の職員が出張する際、航空機が排出するCO2を相殺するための費用を負担しているという。〔共同〕


2月22日 毎日
再生紙偽装:「調査は不十分」環境相が批判
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080222k0000e040032000c.html
 再生紙偽装問題で全容解明を求める環境省の追加調査に対し、一部の製紙会社は今年度分しか古紙配合率を裏付ける工場データを提出していないことが22日分かった。鴨下一郎環境相が同日の閣議後会見で明らかにし、「調査は依然不十分。偽装行為は極めて責任重大で、国民の納得がゆくけじめが不可欠だ」と厳しく批判した。
 調査対象17社のうち2社は昨年4月以降のデータしか示さず、いずれも「それ以前のデータはない」と回答。偽装がいつからかは不明で、社内調査でも第三者委員を置いていなかった。一方、85年以来のデータを回答した社や、不足分は退職者に聞き取り調査した社もあった。調査の結果、古紙100%規定のコピー用紙に1.5%しか古紙を配合していなかったケースも判明した。
 鴨下環境相は「偽装は多くのメーカーで多種類の製品で大量に、かつ大幅な配合率不足で意図的に行われてきた。環境について甘くみて、社会の価値観が変わってきた中で漫然とやってきたのではないか」と非難した。
 一方、同省として「相手を信じすぎたこと、善意で努力してきた国民に報いることができなかったことを反省し、今後のメーカー対応に十分目を光らせてゆく」と話した。【山田大輔】
毎日新聞 2008年2月22日 11時26分 (最終更新時間 2月22日 12時35分)

(本文では取り上げなかったが、参考になる記事があったので、同時に紹介)

2月1日 毎日
再生紙偽装:超党派議員、「環境に悪い」訂正を 製紙業界を批判
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080201ddm003040061000c.html
 再生紙偽装問題を受け、超党派の衆参議員76人でつくるリサイクルシステム議員懇談会(会長=甘利明・経済産業相)は31日、関係者から意見を聞く臨時会合を開催。出席した日本製紙連合会の梅村美明理事長に対し、「業界は再生紙が環境に悪いという誤ったメッセージを発している。このままでは日本のリサイクルは崩壊する」と、訂正の公式見解を出すよう異例の要請をした。
 また、環境省に対し、グリーン購入法見直しには市民団体や古紙リサイクル関係者を委員に加え、改めて最適な古紙配合比率や品質を定めるよう求めた。
 議員懇の大畠章宏幹事長は「7月に『環境サミット』をやる国で、紙のリサイクルは環境に悪い、海外から原料パルプを買おうという姿勢でいいのか」と製紙業界を強く批判。偽装問題を機に「100%が必ずしも環境にいいわけではない」(鈴木正一郎・製紙連会長)などの発言が続いていることに対し、日本再生資源事業協同組合連合会の紺野武郎会長が「古紙回収は環境に悪いんですかと集団回収に当たる市民団体や自治体から苦情が相次いでいる。大至急誤解を解かないと古紙リサイクルはおかしくなる」と訴えた。
 中国などに質の良い古紙が流出し、配合率を守るより品質維持を優先させたとの製紙業界の説明には、「古紙輸出が少ない90年代から偽装はあった。理由にするのはおかしい」(古紙問題市民行動ネットワークの中村正子代表)などの批判が相次いだ。【山田大輔】
毎日新聞 2008年2月1日 東京朝刊

カテゴリー[ 森林 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 02月 24日 23:56:57

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

カレンダー
< 2008年 02月 >





1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29
プロフィール
山猫通信社 篠宮
山猫通信社
カメでも読める のてのて環境ニュースクリップ
このメモは猫のヒゲ
◆環境カウンセラー兼フリーランスのライター・編集業の「山猫通信社」については、上のHPをぽちっとどうぞ。ブログをみてのご連絡は、sorano_ki@yahoo.co.jpへ。
◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
◆トラックバック、どうも故障中の模様(早く直してくれAFP)。
最近のコメント
[07/29] タテゴトアザラシ エトセトラ
[06/30] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 管理人(山猫通信社)
[06/27] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 kkneko
[06/27] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 kkneko
[05/29] ホッキョクグマは野生のクマ 管理人(山猫通信社)
[05/28] ホッキョクグマは野生のクマ あるる
[04/07] オーストラリアのアジアゾウと森林 管理人(山猫通信社)
[04/05] オーストラリアのアジアゾウと森林 うえ
[02/12] これはいい記事。 管理人(山猫通信社)
[12/19] 発見、即、絶滅危惧指定、とならないように 管理人(山猫通信社)
最近のトラックバック
検索