カテゴリー [種の多様性]

誰が「それ」を望んでいるというのだろう

【動画】絶滅危惧種リスト08年版に登場した動物たち

【10月7日 AFP】絶滅危ぐ種を示す「レッドリスト(Red List)」の08年度版が6日発表され世界の哺乳(ほにゅう)類の半分の種で個体数が減少している上、三分の一以上の種は絶滅の危機に瀕していることが明らかになった。
≫続きを読む…
(c)AFP

AFPBB News


肝心のIUCN日本委員会の方にはまだニュースリリースがない。
(ひょっとすると暫く出ないかも)
同系統の情報としてはWWFジャパンのニュースの方が詳しいと思うので、参考にリンクを。
→10月06日 WWFジャパン
 1万6,928種が絶滅の危機に 2008年版IUCNレッドリスト発表される
  http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/news/2008/20081006.htm

この件、ほとんどの日本語メディアが取り上げている、
(<続きを読む>にそのリンクを収録予定、オススメはナショジオの2つの記事)
それだけ注目度の高いテーマであるとも言える。
そこから感じられることは、今回のお題にした通り。
つまり、そんなことは誰も(というかほとんどの人が)望んではいないこと、なのだ。

それなのにどうして? という、この結果。

その動物たち・植物たちがいなくなってしまうことが悲しいという
情緒的な反応も当然あるだろう。
ニンゲンに他の生物を絶滅させることが許されるわけがない、というような
道義的な観点からの反応もあるだろう。


それから。
その「リスト」にいつ何時ジンルイが加わらないとも限らない、という
セーフティネットとしての生物多様性、
それが崩壊しつつあることについても、
もっと目が向けられていいと思うのだが、
こういう発想をするニンゲンはやはり数が少ないのだろうか。

生物界の共生システムを見てみれば、
地球環境内において、他生物とかかわりを持つことなく、
単独で繁栄を続けられるような生物種は、一つとして存在しない。
そう考えれば、哺乳類の25%が絶滅の危機にあること、
いわんやアジアの霊長類の79%にその恐れが高くあるということは、
ジンルイにとっても文字通り「他人ごと」ではない。


一つ、余分な感想を言えば、
今回は哺乳類や海洋生態系に関する記述が多く見られたし、
また両生類についてもきちんとポイントを押さえているが、
鳥類に言及している記載がほとんど見当たらなかったのが、残念。

ナショジオの報道によれば、
>2008年版レッドリストでは、現在確認されている両生類、哺乳類、鳥類の全種が評価の対象となった。これは初めてのことだ。
とある。
し、
鳥類の種としての脆弱さはこれまでも長く指摘されてきている点だ。

(ところで、ここの「哺乳類」には「ジンルイ」は入っていないんだろーか?)


ともあれ、他人事ではなく「自分事」としても立ち上がってくる話として、
この件をもう少しまじめに、そして頻繁に意識して
行動を少しでも変えていくしかないのだと思う。
わたし・たちが本当に、「それ=生物種が絶滅すること」を
望んでいないのであれば。

(以下、この件に関連する国内の報道を)

.
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登録日:2008年 10月 07日 22:59:39

海流の異変、大量の迷子

【動画】1000羽以上の迷子ペンギン、ブラジル海岸に漂着

【9月1日 AFP】ブラジルの海岸には、この6月末から多くのペンギンが漂着している。地球温暖化で暖流の流れが変わったため、通常の目的地から1600キロも外れた場所へ迷い込んでしまったのだ。(c)AFP


<AFP動画ニュース一覧へ>

AFPBB News


動画のラスト、瞳を閉じるペンギンの表情がいい。
どうか無事で、生き延びて欲しいと思う。

最近のAFPの報道の中ではいい掘り下げ方をしている事例。
詳しくは動画を見ていただきたいのだが、
(訳文に「消防士」とあったが、ライフセイバーのような気がする、それはさておき)
海流が変わった影響で
1000羽を越えるマゼランペンギンが
迷子としてブラジルの海岸に打ち上げられており、
その保護と回復に現地のいろいろな人びとが尽力をしている、というもの。

チリやアルゼンチン南部に行くはずのマゼランペンギンたちが
ブラジルにいる、というところ、驚くしかない。
本来の目的地から1600キロも北上している、というのだから、
当人(ヒトじゃないけど)たちの混乱は大変なことだろう。

個人的には、
具体的な保護の仕方が動画で見られるのは、興味深い。
抱きかかえ方、餌の与え方(スポイトを使うんかー)、
体を温めたほうがいいということ、なども。

ただし、これだけ力を尽くしても、
ペンギンたちの生存率は決して高くなく、半数近くが助からないという。
話の中で、若い個体が多いということが出ていたが、
そこから類推すると、経験のなさ・浅さによる危機回避能力の低さも
迷子を悪化させている要因となっているのかもしれない。


海流が変わった原因として指摘されているのが例によって温暖化だが、
そうではないという見方もあるとしている。

が、いずれにせよ、
マゼランペンギンという種全体の保全を考えれば、
海流の変化が人為であろうとなかろうと、こうした保護に取り組む意義は
計り知れないほど大きい。

回復後は保護された地域から南に3000キロ離れた
本来の生息地の近くへと放す予定という。
その数がどうか1羽でも多いことを、祈らずにはいられない。
強く、つよく。

.

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登録日:2008年 09月 03日 23:26:16

不純な動機

動植物の絶滅は人間の治療薬開発にも打撃、専門家らが警告

【4月29日 AFP】多数の動植物を絶滅から救えず「生物多様性」が失われることになった場合、新世代の抗生物質の開発が行き詰まり感染症やガンの治療の未来が閉ざされることになるとの専門家の報告が、23日に発表された。
≫続きを読む…
(c)AFP/Martin Abbugao

AFPBB News


これは以前にも、どこかで見かけた訴えだな、と思いつつ。

1980年代の後半から90年代初頭にかけて、
世界の原生林に対して行われている商業伐採の問題が
盛んに取り上げられていた頃も、
このようなことは(それほど大きくはないけれども)もちろん言われていた。

当時 言われていたことは、
地球表面の数パーセントの面積を占めるに過ぎない熱帯林において、
全生物種の約半数を数えることができること、
また抗生物質の、これもまた約半数が熱帯の生物由来のもので、
工業製品でもなんでもないこと、
(よく勘違いしているヒトがいるけれども、薬の多くは自然物由来である)
という指摘。
これはもちろん科学的にも動かしがたい事実。
で、
それだけ豊かな生態系を育んでいる熱帯林が失われてしまえば、
将来薬になるかもしれない植物やその他林産物や動物といった希少生物を、
発見の前に失ってしまうのではないか
……ということは、もう20年以上前
(自分が知っている限りにおいてだから、
さらにそのもっと前から言われていたかもしれない)
から明らかなことであった。

まあ、このテーマだけに絞った本が出るというのは
恐らくほとんど無かったと思うので、
その意味ではいい問題提起になるものとは思う。
医療の専門家が噛んでいるのであれば、尚のこと。


◆ ◆ ◆

たぶん小学校か、せいぜい中学で習うと思うのだが、
生態系ピラミッドという、食物連鎖をわかりやすく図にしたものがある。
どのような生物種であっても、
ものを食べることで生きている存在である以上、
この生態系ピラミッドの中に含まれる。
そこから外れる存在はない。

命あるものはかならず、
ある存在からは食べられ(または分解され)、
あるいは他の命あるものを食らわなければ、
この地球上で生きながらえることはできない。

それは、ニンゲンも同じこと。

理科や生物の授業などで習う生態系ピラミッドの図に
ニンゲンが入っている図というものは
滅多にみかけないのだが、
(見たことのあるヒトは情報宜しくです) ※1
実はニンゲンだってちゃんとそこに含まれている。
 生きものではない食べものだけを食べること
で生き続けることのできるニンゲンなんて
一人もいないのだ。


◆ ◆ ◆

ある種が絶滅してしまうということは、
食う・食われるというこの生態系ピラミッドのピースの一欠片が
永遠に失われるということである。
欠片の喪失が少なければまだ多少は持ち堪えたとしても、
失われるものが増えると
やがてはピラミッドそのものが崩壊する。

もちろん、この生態系ピラミッドは
全ての生物種が関わっているものであるから、
どこか遠くの、
ジンルイにほとんど知られていない何らかの種が絶滅したとしても、
それが巡り巡ってジンルイにまで影響を及ぼす、
ということもまた起こりうる。

この写真記事が取り上げているのは薬品・医療関係に絞った問題提起だが、
食べものだけではなく、
薬のような命の危機や体調管理に関するセーフティー・アイテムについても、
同じことが言える。
(薬草を使うのは何もニンゲンだけではない。
他の生物も食糧以外の用途で他生物を利用することある)

また、別の角度からの影響もある。
森林伐採が進んだことでマラリア蚊が人里にまで広まった、という例も
(絶滅かどうかは別として)あるように、
そこに他の生物種が存在してくれていたおかげで食い止められていた
災害や疫病のようなマイナスの要素が増大する、
ということも起きてくる。


そう考えた場合、
自分の、あるいはジンルイの安全保障という面からも、
種の多様性(生物多様性)の保全や環境破壊問題への取り組みというのは、
意味があるのだ。


◆ ◆ ◆

もちろん、森林にしてもまたそこに生きる野生生物にしても、
存在していること、そのものは価値があるのだと思う。

けれども、そうした価値観を抜きにしても、
「自分が生き延びるために」
野生生物保護に取り組んでみたり、
原生林保護活動に参加してみたり、というのは
家の頭金作りのために残業して働くのと、ある意味地続きでもあるのだ。
ものすごく判りづらいし見えづらいかもしれないけれども。


ここで動機の純・不純を問うという行為は、
今まさに絶滅に瀕している動植物の当事者にしてみたら、
ほとんど意味のないことだと思う。

その動植物を保護したいという動機が、
・その対象物が好きだから(美しいから・可愛いから・価値があるからetc.)
というような精神論だけではなく、
・その対象物を保護・保全することで経済的な価値を生むから
・その対象物を保護・保全することで
 ニンゲンの生存に関する安全保障が高まるから
であっても、
絶滅の淵から生還できるのであれば、
こんなに意味のあることはない。

むしろ、動植物の保全活動なるものは、
「オランウータンがかわいそう」「ガラパゴスゾウガメはかっこいい」
というような視野が狭窄した動物ヲタク(自分のことだ)や、
「希少種はそれだけで存在する意義が高い」
「命あるものは命があるということに意味がある」
というような哲学的な観点からものを語れる人びとだけが
やるもんでもなかろう。

誰もがめぐり巡って関係しているのが、生物界というものなのだから。


もっと、利己的でもいい。
もちろん、利己的とはいえ、
地球は別にニンゲンのものでもなんでもないのだし、
ましてや他の生物種を所有しているわけでもないので、
そこんところさえ勘違いしなければ、
という点を踏まえてのことだが。 ※2


※:ニンゲンの入っている生態系ピラミッドを滅多に見かけない理由は、きっと「ジンルイが多すぎるから」だと思う。それは、生態系ピラミッドの頂点に近い生物種は数が多すぎると生態系のバランスを崩す、という生態系ピラミッドの根本を突く提起になってしまうというのもあるし、あとはただ単純に美的なデザインに収められないから、ということもあると思う。

※2:同時に、その「利己的」の中身を問い続けていくこともまた必要かもしれない。

※3:2年前にも同じようなエントリを上げていた。
  →絶滅の「何が」問題か http://www.actiblog.com/yamaneko/3990

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登録日:2008年 05月 01日 23:28:27

もっと軸がぶれてもいいのに

米大統領が海軍ソナー使用許可、「安全保障はクジラ保護に優先」

【1月18日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は16日、国家安全保障は海洋動物の保護に優先するとして、ロサンゼルス(Los Angeles)連邦地裁がカリフォルニア(California)州沖で軍事演習を行う米海軍に対し音波探知機の使用を禁じた判決を適用しない方針を明らかにした。
≫続きを読む…
(c)AFP

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ブッシュらしいというか、
こういう一貫性だけは外さないヤツだよな(←もちろん褒め言葉ではない 。


京都議定書も無視するくらいなのだから、
軍事より生態系を優先する、という発想なんかももちろん一蹴だ。
まあ、10人に1人は軍事関連産業で生計を立てている
というハナシを聞くくらいの国ゆえ、
こういう輩が幅を利かすんだろうな。
あるいはブッシュ個人が、ソナーの開発会社から幾許かの献金を
貰っているのかもしれない。

ああ、すがすがしい。ぶん殴りたくなるくらいに。 ※


クジラをはじめ海洋生物に影響があると言われて久しい、
アメリカ海軍使用の中周波ソナー(音波探知機)だが、
せっかく、少なくともカリフォルニアでは使用禁止としたというのに、
(1月4日 AFPBB 米カリフォルニアで海軍ソナーの使用制限判決、環境保護団体が勝利
その前提のちゃぶ台をひっくり返しやがった。

ちなみにこの同じソナー、沖縄でもやはり使用されている模様。
しかも、こちらは裁判所の停止命令のようなものすらなく。
 1月6日 沖縄タイムス 米加州連邦裁、海軍ソナー規制/沖縄近海でも使用
(この記事の後半から。本文は<続きを読む>に収録)
ニホンって、本当に独立国家なんざんすかね? 
いや、マジで。


◆ ◆ ◆

さて、一方 現地の環境NGOは、
>ブッシュ大統領の判断は「法の支配に対する攻撃だ」として提訴する考えを明らかにした
など、合法的かつ毅然とたたかいを挑む模様。

きっと、これまでにもロビイングなどをいろいろとやってきているんだろうが。
たとえば、この言い回しとか。
>カリフォルニア沿岸委員会(California Coastal Commission)のサラ・ワン(Sara Wan)コミッショナーは(中略)「われわれ(沿岸委員会)や連邦地裁は、クジラたちの保護と軍事演習の両立は可能だと主張してきた」(後略)
とあるように。
両方が折り合える地点を地道に探していた可能性を滲ませる。

こういうロビイングとか根回し的なNGOの活動は地味だし絵にならないから
報道のボリュームがかなり少ないのだけれども、
こういう取り組みなんかの報道が増えると、
社会ももっと風通しが良くなるんだがな、と思いながら、少しばかりタメイキ。

それはさておき。


◆ ◆ ◆

に、しても、
ブッシュの行動原理というか、
その欲の方向性とか損得の換算の仕方とか、
ほんま分かりやすいやっちゃな、と思う。
もちろんそれは、ムカつく程の怒りを感じながら、だけれども。


※:多くの人が同じことを思っているだろうが、シー・シェパードはニホンの捕鯨船を攻撃するのと同じように、このソナー遣いの米国海軍に戦いを挑むべきだよな、と。シー・シェパードについては、人種差別的な見地もありそうだけれども、このエントリで上げたことも連想させる。ミサイル持っている相手よりかは丸腰の相手の方が叩きやすい、ナドナドと。

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登録日:2008年 01月 20日 23:56:56

「バイアグラ」はごく一例

ウガンダで「バイアグラの木」絶滅の危機、地元住民男性ら不安の声

【1月3日 AFP】アフリカ東部のウガンダで「バイアグラの木」として愛好されている木が絶滅の危機にひんし、地元の男性たちの間で不安の声が高まっている。
≫続きを読む…
(c)AFP/Lucie Peytermann

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と、2週間ほど前の写真を引っ張り出してきたのだが、
エントリ自体は元記事からもう少し踏み込んで考えてみたい。

これ、キャッチーな「バイアグラの木」だけではなく、
それを含む生物の多様性が失われつつあるという問題として捉えないと
なーんも見えてこないと思う。

もともとの森林にあったあれこれの生物が失われ
二度と再生することがないかもしれないという、
種の絶滅の危機の、その分かりやすい一例が
「バイアグラの木」に過ぎないのではないか、というか。

たとえばこの「バイアグラの木」が失われてしまった場合、
困るのはニンゲンだけではなくて、
その木に棲んでいた昆虫や、
黴などの微生物から、共生関係にある他の植物、
それらを餌にしていた小動物など、
その種につながるさまざまなものたちにまで影響が及ぶ。
ことは、この木が失われ絶滅するかも、というだけの問題ではなく。

逆に、この「バイアグラの木」が無事だったとしても、
他の種が失われたとしたら、
その失われた種に依存していた生物が
(植物でも昆虫でも動物でも)数を減らし、あるいは逆に増えすぎえることで、
結果的にこのバイアグラの木にもまた影響が及ぶこともある。

いずれにせよ、トータルに生態系そのものが維持されなければ、
ニンゲンもまたバイアグラの木の恩恵には与れないということだ。

それにおそらく、地元ではほかにも
さまざまな薬草類が森林から得られていたことと思う。
たとえば、子どもの熱さましや傷薬といったようなものが失われることの方が、
より問題は深刻な気がするのだが。

と、このように、
つまりは「バイアグラの木」は一例に過ぎないということ、
もっとより多くの「種の絶滅の危機」がこの地には潜在的に存在するということを、
この写真を見て、その背景として想像した方がいいんじゃないかな、と。

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登録日:2008年 01月 19日 22:43:37

食うは一時の欲、食わぬは一生の快

政府、ザトウクジラを捕鯨対象から除外

【12月21日 AFP】町村信孝(Nobutaka Machimura)官房長官は21日の記者会見で、調査捕鯨で計画されていたザトウクジラの捕獲を当面見合わせる方針を明らかにした。
≫続きを読む…
(c)AFP

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横顔がナイスなザトウクジラの写真。
表情が実にいい。


◆ ◆ ◆

これはひょっとして捕鯨に限らないのかもしれない。

 食っちまえばそこでそいつはいなくなっちまう。
 けれども、食わずにとっておけば、また何度も楽しめる、
と、お題に挙げたようなことは
あれこれの事例に当てはまるのではないかと思いつつ。


実際、全体的な産業構造を考えた場合、食べることよりも
ホエールウォッチングのような観光に力点を置いた方が
長い目で見て上手く儲けられると思う。
しかも、敵をつくることなしのWin-Winで。


◆ ◆ ◆

だいたい、今の(飽食)ニホンで
そこまで必死こいてクジラを食わなければいけない理由は何なのか。

同じように絶滅が囁かれているマグロと比べても、
多くの食卓においては
マグロほどの切実さはクジラに関してはないだろう。


んでもって、第一次産業振興の観点から言えば、
近海漁業へのてこ入れや沿岸で行う養殖の技術を高めるといった
自給率アップにつながる施策の方が
ずっと重要というか、優先度が高いと思う。

それでもまあ結局、こんだけ捕鯨派の声がでかいということは、
それだけ業界が上手い具合に為政者に圧力かけてんだろう。


◆ ◆ ◆

もうひとつ言ってしまうと、
ニホンの文化だ、伝統だ、云々という
メンタリティに訴えかけるような宣伝は、正直鬱陶しい。
(ついでに白人たちが反対している、というのがまた感情を煽っているというか、
何気にうまい具合にニホン側の感情をコントロールしているところが
その野暮ったさに輪をかけている) ※

だいたい、伝統的な捕鯨のあり方と、今の商業捕鯨とでは、
ぜんぜん違うよなぁ。
昔は遠洋に出ることもなかったんだから、
これを伝統やら文化やらというカテゴリーに括るには、
いくらなんでも無理がありすぎるだろう。

日常的に和装をすることもないようなニホンジンが大半の状態で、
ここだけ限定で「捕鯨は文化」と言ってもねぇ。
それに、食に限っていえば、捕鯨のあるなしよりも米の消費減少の方が
ずっと文化破壊だろうに。


◆ ◆ ◆

もうひとつ大きな疑問があるんだが、
ニホンって何年調査捕鯨やってんだろう。
かなーり長々と、毎年「調査」をやっているよな、これ。

そんだけ長年の調査があるのだから、
さぞかし相当のデータが蓄積されていることだろう。

で、捕鯨賛成論者の中からは
数が増えているとか適切な間引きが必要だとかいう話もあるようだが、
そのデータがまるで説得力を持っていない(ように見える)のは、
単に宣伝が下手なのか、それとも
自分たちに都合のいい数字しか拾わないから
本当に説得力がないのか。
いったいどっちなんだろう。


◆ ◆ ◆

温暖化の影響でオキアミの量が激減していることや、
(捕鯨に限らず)収奪的な漁業が行われることによって
人為的に海中の生態系が相当乱されている事実を考えると、 ※2
海中の生態系ピラミッドの頂点に立つクジラ類が増えているというのは、
科学的に考え難いと思う。

クジラのみならず、イワシやマグロまでも資源枯渇が言われる中で、
反対論者の議論を突き崩すには、相当の科学データが必要だと思われるが、
それはいったいどこにあるのか。

ことに絶滅の危機というケースに関しては、
予防原則の適用が相応しい。
 いや、実は大丈夫でした
ということが科学的に証明されれば、
その時点で再開すればいいだけの話ではないのか、これは。


※:クジラが利口だとかバカだと可愛いとか醜いとか、あるいは白人がウシは食っていいがクジラはだめというのがけしからんとか、そういう感情論的なものはもう止めにしたほうがいいと思う。海洋中の種の多様性が損なわれるかどうか、だけで見ていくことができないものなのか……と溜め息が。

※2:捕鯨ではないが、ヴァンダナ・シヴァの『食糧テロリズム』の62~63Pくらいにそのあたりの詳細なデータがある。

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登録日:2007年 12月 22日 00:29:29

発見、即、絶滅危惧指定、とならないように

新種ほ乳類2種、インドネシアの「秘境」で発見

【12月17日 AFP】(18日写真追加)非政府組織(NGO)の国際環境団体「コンサベーション・インターナショナル(Conservation InternationalCI)」は17日、インドネシアのパプア(Papua)州ホジャ(Foja)山脈の「秘境」で、新種とみられる2種のほ乳類を発見したと発表した。
≫続きを読む…
(c)AFP

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情報の出所は国際環境NGO、コンサベーション・インターナショナル(CI)
そのニホン サイトでも既にニュースリリースが出ている(和文)。
 http://www.conservation.or.jp/Newsroom/Press_Release/2007_12/Foja2007.htm


哺乳類が2種も立て続け、というのんが、ちと驚き。
しかも、まだ小さいサイズのものであれば
未発見の哺乳類はいると考えられていたものの、
実物写真のものは相当デカい。
都市部のネズミの5倍ということだが、
こんな大きいサイズの新種にまだお目にかかれるとは思わなんだ。

ロストワールドとも呼ばれる西パプアだが、
CIのニュースリリースによると、この新種らを発見できた地域は
>フォジャ原生自然地域は、アジア太平洋地域で道路の無い最大の熱帯林である大マンベラモ流域の一部
とのこと。
開発がほとんど入っていない(っぽい)ということで少しほっとしているが、
それがいつまでもつか、という心配も湧き上がる。
なんせインドネシアは、違法伐採こそ取り組みがあるものの、
それ以外の開発(農業やらプランテーションやら)には
基本的にかなりご執心という国でもある。
いつまでもこの地域の自然環境が失われないでいられるかどうか、
油断は禁物だ。 ※

そうはいっても
 ある程度開発が入った(=環境が劣化した)ことによって
 新種もまた発見されやすくなった、
という状況ではなかった模様。
それだけは何より。
お題にも挙げたように、発見と絶滅の危機とが抱き合わせとならないように、
祈るのみ。


※1:ちなみにこういう(環境負荷を無視した)開発で伐採されたり生産されたり品物をニホンが輸入している、というのもまた事実。そこで原生の自然を守るためにできるもっとも簡単な方法は、「こういうもんを買わない」という選択だろう。そこで、何が「こういうもん」に該当するのかを、わたし・たちはもっと調べたり、売り手に質問したり、売り手にリクエストしたり(なんせお客様は神様だ)、という、つまりは知るということを面倒がらずにしていく必要がある。
※2:関連しそうな当ブログの過去記事も貼り付けておく。
2006年2月6日 失われて・いない・世界
 http://www.actiblog.com/yamaneko/3111

あと、報道もいくつかあるが、17日のCNNだけ<続きを読む>に保管。

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登録日:2007年 12月 17日 23:40:32

既にわたしたちの手は血に染まっている

水害に見舞われたベトナム南部でワニ養殖所が全壊 数百匹のワニが逃げる

【11月13日 AFP】ベトナム南部カインホア(Khanh Hoa)省で、鉄砲水により国営ワニ養殖所の一部が損壊し、数百匹のワニが近くの川に流された。
≫続きを読む…
(c)AFP

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ここがワニたちにとって移入地、外来地でないんなら、
生き延びてもええんじゃね? と思いつつ。

まあ、地元にしてみたらやっぱ怖いだろうから、
自分がこんなことを言えるのも部外者ゆえのいーかげんさなんだろう。
基本的にワニ、好きだし。


この件、ロイターやCNNでも取り上げられている。
11月12日 ロイター ベトナムのワニ飼育場、洪水により数百匹が脱走
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071112-00000441-reu-ent
11月13日 CNN ベトナムのワニ飼育場、洪水により数百匹が脱走
 http://www.cnn.co.jp/science/CNN200711130017.html


同じような事例の場合、たとえばミンクなんかだと
10月28日 AFPBB ドイツ軍、脱走した1万匹のミンクの回収に奔走
 http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2303903/2288959
見た目がかわいいってだけで
えらく同情を集めているっぽい。
もちろんワニのようにニンゲンに直接害を及ぼさない、危険ではない
というのも要素としてありそうだが。
そうはいってもまあ、要は
哺乳類ってだけで。
外見がかわいいとか、そういうのんが、
何気に気持ちの上で大きく作用している、と思う。


けれども。
ミンクの場合、
たとえ直接の人的被害がなかったとしても、
実はジンルイ以外にはどんなに迷惑なことになっているかを考えると
頭が痛くなるハナシなんだがな、これ。

基本的に、当ブログでの立ち居地は、
外来種・移入種に関しては、その手の逃亡や放置は認めないし、
回収が筋だと思う。
過去記事でも取り上げたように。
 2006年10月22日 愛なんかいらない
 http://www.actiblog.com/yamaneko/18268


◆ ◆ ◆

ワニが相手となると、やっぱ怖いというのもあるんだろうが、
にしても、哺乳類や美形の生きものとの比較の上で同情が減るというのは
納得がいかない。

たとえば、ワニの記事の前日のものだが、
11月12日 AFPBB 野生のウマを射殺処分、州政府の計画に動物愛護団体らが憤慨 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2310586/2340641
この事例に関しては、
個人的に、あるいは当ブログとしては、消極的だが賛成せざるを得ない。
当該地の本来の生態系の方が優先度が高い、という意味で。

もちろん、射殺以外の手法、
たとえば全部を捕獲して別の地域で囲って飼育し続ける(不妊手術つき)
というような対処方法の方がもちろん好ましいに決まっている。
けれども、予算がないとか、人的資源が割けないというような場合は、
駆除もやむをえないと、言うしかない。

これは、自分が直接手を下す立場ではないことによる、大甘の見方であるという、
その自覚はある。

>また、英国動物虐待防止協会(RSPCA)オーストラリア支部は野生のウマの処分計画を容認しながらも、銃で撃つより雌ウマに薬物を注射して不妊にする方法が好ましいとしている

これもわからなくはないのだが、
不妊にするだけで地元の生態系の攪乱を抑えられるとは思えない。
固有種への影響や土壌や水環境の悪化、
先住民族アボリジニの文化遺産を破壊しているという点を考えると、
増えこそしないものの
何年かはずっとそこでそのまま一生を全うさせて終わらせる
という選択肢は、
詰めが緩すぎるとしか言いようがない。


んでもって思うんだが、
こうしたことが話題になるというのも、
相手が馬という、「見栄えのいい」「哺乳類だから」、なんだろうか。

そんな思いが、鬱々と。

まあ、ワニが自分にとっての贔屓動物だというのももちろんあるが、
それにしても一般的な反応の差からしてみたら、
ほんまニンゲンの見栄え重視というか
身内に近いもの(爬虫類よりは哺乳類、のような)への温度差というか、
そういうのんに ほんまにげんなりしてくる。


◆ ◆ ◆

実は同じ日に、
この馬の場合と対照的な写真記事もあった。
ことが昆虫となると、同情論は一切聞こえてこなくなる。

11月12日 AFPBB 中国とオーストラリアで外来種の病害虫が異常繁殖、交尾の習性に要因   http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2310915/2342997
もちろん、「害虫」のレッテル貼りについても、何の躊躇いも無い。
(まあ、ここんところは自分もそう判断することになると思うが)


あるいはこちらの外来蜘蛛のハナシなどは、
即座に害虫という単語は用いられていないが、扱いが実に無機的。
好悪の印象そのものが抜け落ちている感じ。
11月16日 AFPBB 欧州で外来種のクモが年々増加 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2312402/2357031

どーでもいいが、このクモの写真はかなりかわいい。


ちなみに欧米だと
どうもクモにあまり良いイメージがない視点からの話が出ることが多いが、
(その意味では、この16日の写真記事は比較的マシ)
やはり毒グモのイメージが強いからだろうか。

ニホンでも外来種である「セアカゴケグモ」がいるが、
在来の日本のクモに関して言えば毒グモは皆無。
しかもほとんどのクモは、生活の中でも農業の上でも「益虫」としての働きが高い。
家に棲む不快害虫の天敵であったり、農作物の害虫にとっての天敵であったり。
ああ、素晴らしい。
ニホンで暮らすのであれば、基本的にはクモは大事にしたほうがいい、
ということだ。
(除く外来グモ)


◆ ◆ ◆

と、ハナシがだんだんと散漫になってきたが。
要は、その土地の本来の生態系に
どのようなインパクトを与えるか、あるいは与えないのか、
で判断することの必要性だ。

そうした視点を持つことなく、
見た目やら、哺乳類かは虫類か昆虫かというその種の属しているなかまによって
ニンゲンが恣意的に判断してしまうことが、
結果として外来生物による生態系の破壊をもたらしている、という。
そういうのん、もうちょいなんとかならんのか、ということなんだが。


◆ ◆ ◆

ニホン国内でここ最近報道された移入種・外来種のニュースのうちいくつかを
以下に紹介していく。
一部は見出しのみ。一部は<続きを読む>に収納。

9月7日 沖縄タイムス シロアゴガエル石垣定着/在来種へ影響懸念
 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071700_06.html
9月20日 紀伊民報 ジャンボタニシの卵 上富田の水路に点在(和歌山)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070920-00000005-agara-l30
9月24日 紀伊民報 カミツキガメ捕獲 どう猛で危険な外来種(和歌山)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070924-00000006-agara-l30
10月7日 中國新聞 外来植物、25年で2倍超す
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200710070341.html
10月8日 紀伊民報 急速に生育域拡大、外来生物ナルトサワギク(和歌山)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071008-00000001-agara-l30
10月23日 南日本新聞 アフリカマイマイ 出水で新たに89匹
 http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=7252
11月5日 富山新聞 外来魚捕獲、生態系守ろう 氷見・塩田池、ブラックバスなど駆除
 http://www.toyama.hokkoku.co.jp/_today/T20071105203.htm
11月18日 新潟日報 外来魚駆除へ地引き網、上越
 http://news.goo.ne.jp/article/niigata/nation/2-54349-niigata.html
11月27日 毎日新聞 カエルツボカビ症:感染症防ごう 世界各地で被害対策、放流禁止呼びかけ /兵庫
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000178-mailo-l28
11月27日 信濃毎日新聞 外来魚のブルーギル ナマズに食べさせる駆除を実験
 http://www.shinmai.co.jp/news/20071127/KT071126GJI090009000022.htm
11月29日 毎日新聞 <アライグマ>九州でも繁殖中?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071129-00000053-mai-soci

これは別に外来種や移入種についての全部の事例ではないが、
最近の事例を知るだけでも実にいろいろなことに気づくことができる。

外来種や移入種といっても、
植物から始まり、カエルに貝、カメに魚、アライグマ
などなど、いろいろいる。
多種にわたることはもちろん、
その移入のいきさつも、駆除の為に必要とされる手法も、実にさまざまだ。

共通する点をひとつ挙げるとすれば、
一度その地に入ってしまうと後で「やっぱいらね」と思ったとしても
なかなか駆除ができない、という点。
実際に実施するとなると、とても困難、大変だ。
予算も人手も、というような部分はもちろん、技術的にも難しい。
で、
そうこうしているうちに、その地の本来の生態系は攪乱され、
その地域に暮らしていた種のうち、いくつかは絶滅へと追いやられていく。


こうした鬱々とした状態を少しでもなくすためには、
原則的に
その地にとっての移入種・外来種を
外に放したり逃がしたりしないのはもちろん、
相手が哺乳類だろうが美形だろうが可愛かろうが
腹をくくってその土地から排除するしかない。
それに対して軸がぶれることなく取り組むしかない、
ということだ。

これはもう、考えもなく自然の下に非自然の生きものを放した側の
罪だと、はっきり自覚するしかない。

先のオーストラリアの馬の話で言えば、
まさに自分の手を血に染める覚悟が求められている。
それを拒否している間に
他の生物の血が流され、
種によっては絶滅の憂き目に遭い
この地球からその存在が永遠に失われていく。

その地に移入種・外来種を放った瞬間から、
既にわたしたちの手は血で染まっている。

ただ単に、気がついていないだけのことで。

.
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登録日:2007年 12月 04日 23:07:52

タスマニアの森の話(其の弐)

絶滅危機のタスマニアデビル、繁殖プロジェクトが進行中 - オーストラリア

【タラナ/オーストラリア 11日 AFP】「デビルがん」という悪性の顔面腫瘍性疾患により、絶滅の危機にひんしているタスマニア(Tasmania)島固有の種タスマニアデビル(Tasmanian Devil)の繁殖プロジェクトが、南部ホバート(Hobart)郊外タラナ(Taranna)の「タスマニアデビル保護公園(Tasmanian Devil Conservation Park)」で進められている。
≫続きを読む…
(c)AFP/Anoek DE GROOT

AFPBB News


タスマニアの森の話(其の弐)

6月4日、5日に行われたタスマニアの森の話について、
先週のエントリ(其の壱)の続き。
6月14日
 http://www.actiblog.com/yamaneko/37388


今回は、
タスマニア大学講師で生態システムが専門という、
農業科学博士のピーター・マクィランさんの講演録の
個人メモから。
ちなみにピーターさん、元々は昆虫が専門だったが、
もちろん生物全般に詳しく、且つとても話が面白かった。
本などが出たら売れそうだな、と思いながら聞き入った。
(ニホンにはタスマニアの動物本が少ないし)

写真のタスマニアデビルについての話も、もちろん
ガッツりと喰らいついた。
(なにせ相手は現地の専門家だぜ、べいべー)


◆ ◆ ◆

南半球にあるというだけではなく、
大陸のもともとの成り立ちなどもあって、
有名な有袋類をはじめ、
オーストラリアには固有種がたくさんいる。

タスマニアの場合、
オーストラリア大陸と離れた、「島」である。
そのため、タスマニア島だけの固有種もあれば、
オーストラリア本土で絶滅してしまった動植物が
ここでは生き残っているなど、
生物学的にも遺伝資源的にも非常に貴重な地域でもある。

それらの生きものの生息地とも言うべきタスマニアの原生林が
伐られちゃって、ええの? あかんやろ?
というのが前のエントリだったが、
じゃあ、どんな動植物がいるのか、というのが
ピーターさんの話になる。


◆ ◆ ◆

まずは、タスマニアの生物たちの基礎知識から。

タスマニアの島としての生態系の特長として、まず、
北海道よりも狭い島に、昆虫から哺乳類まで
およそ2万の固有種が数えられるという、
その生態的な豊かさがあげられる。
わけても昆虫は知られているだけでも7641種、
しかも、21世紀に入った今でも
まだまだ新種がざくざく発見されるというから、恐れ入る。
(ピーターさんとこの学生さんが、
あっさりと新種を見つけたりとかってことがあるそうだ)
未発見のものもいることを考えると、
この地がどれだけ豊かで細やかな生態系を保ってきたのか、
ということがよくわかる。

このほか、鳥類でも331種、哺乳類で86種というから、
かなりの数が狭い島にひしめいている、という感じなんだ……が。


ちなみに、古くからの生きものが生き延びていることも
タスマニアの特徴だったりする。
生きる化石と言われる生きものがいたり、ということもあるそうだ。
別の地域では5億年前の化石として発見されている生きものが、
ここではリアルの生きものとして生息している、というような例や
セミの先祖である鳴かないセミなども生息している。
とても古いタイプのクワガタもいる。

これらの貴重な生物が数々紹介されたのだが、
そこにも森林破壊の陰が忍び寄っている。
たとえば、
島の東北地方の森林にしか棲まない珍しいカタツムリなどは、
森林破壊の影響でその数が激減している。
また、大木の、木の朽ちかけたものを栄養とする
シムソンクワガタなども、
10年前にさらに新種が二種も見つかるなどという反面、
その生息地が狭められているものと心配されている。


◆ ◆ ◆

さて、写真にもあった、有袋類・タスマニアデビル。
かわいい顔をしているが、
その鳴き声が恐ろしいことから「デビル」とついたと
言われているのも、有名な話。

タスマニアデビルは、この10年で半減した。
しかも、写真の説明にある通り、
また各種の報道もなされているように、
今、タスマニアデビルには顔面のガンが流行していて、
それが原因で、
あるいは交通事故などで、
はたまた森林破壊を含めた生息地の喪失で、
5万頭ものタスマニアデビルが命を失ったのではないかと
推測されている。
いまや、レッド・データにも載ってしまっている。

この顔面のガンだが、主に接触によってうつる。
というのも、比較的知られている通り、
タスマニアデビルは大変アグレッシブな生きものである。
喧嘩などで接触し、病気がうつってしまう、というわけだ。

生息域が狭まった為、接触の機会が増えた、というのも、
問題を大きくしている。

んで、生息域が狭まったというのは、つまりは伐採なんかも
大きく影響している、というわけなんだが。


同じ病気は犬でもみられるそうだが、とても珍しいもので、
なおかつ犬の場合は命にかかわるものではないという。
他の種は罹患することはなく、
命にかかわるのもタスマニアデビルだけであるという。

これだけの激減ぶりから、
このまま放置していては20~30年で絶滅してしまうと
大きく心配されている。


この件について、
質疑の時間に、動物オタク全開で質問を繰り出した。
その内容は、以下の通り。

今、罹患していないタスマニアデビルだけを捕獲して
ノアの方舟よろしく、病気が収まるまで隔離しておき、
かつ繁殖をも試みる、という
タスマニアデビルの生き残り作戦が計画されている。
が、これに対しては、
その隔離した繁殖地の生態系に影響を与えるのではないか、
ということで反対する声も聴かれている。
この影響について、ピーターさんの個人的な見解でいいので、
どうするのが一番好ましいのかを教えて欲しい、と。

ピーターさんは、
移植地の環境配慮もあるが、やはりそれを言えないほど
タスマニアデビルの状況が悪いのだ、ということ、
そして「藁をも掴む」思いで、全ての手を尽くすべきである、
やれるだけのことはやるべきだ、と力説。

それだけ追い込まれている、ということを
憂鬱な思いで噛み締めた。


◆ ◆ ◆

同じく哺乳類として、
有袋類であるオオフクロネコも絶滅の危機にさらされている。
というのも、オオフクロネコは、
高い木、密林が好きな生きもの。
器用にも木に登り、鳥などを狩り、そして木の上に棲むという。
その木が、減ってきているのだから、
オオフクロネコにとって世の中は難しい。
また機敏な生きものだが、
それゆえなのか交通事故も多いという。


鳥類では、オトメインコとオナガイヌワシの話も興味深かった。


タスマニアのオトメインコは
世界のインコの中で一番長距離移動を行う。
(確か3000キロだったか、数字メモが見当たらない;汗)
オーストラリア大陸にもいる渡り鳥だ。

ユーカリの受粉に欠かせない媒介者でもあるが、
いまやその数は1000つがいほど。
エサが減っていることも大きく影響して、
繁殖数も減っているという。

また、早く飛ぶという特性があるのだが、そのためなのか
交通事故や建物への激突などによる死亡も多いという。


世界最大のワシの一つ、オナガイヌワシも、
絶滅が心配されている。
まあ、猛禽類は、
ほとんどどこの地域でも、生息地の汚染や破壊、
はたまた繁殖率などの関係で、
希少種になりやすい傾向が高い。

タスマニアのオナガイヌワシの場合、
森林伐採に伴う生息地の減少のほかに、
農家などによる狩猟が圧力となっている。
まあ、農家にしてみたら家畜を襲う害鳥といったところ
なんだろうか。

んでもって、他の地域の猛禽類と同じく、
営巣や繁殖に関してはとてもデリケートなので、
人影があると、もうそれだけで巣を放棄する。
そのため、オナガイヌワシの巣の周りの10ヘクタール以内は
ヒトが入ってはいけない、とされている。
が、問題は決してこのことが守られているわけではない、
といったあたり。
また、巣となる高木や営巣にいい環境が減っているため、
巣を巡る競争が凄まじいというのも、心配材料となっている。


もう一つ面白い生物が、世界最大の淡水ザリガニ。
これはタスマニアの北部にだけ棲む固有種で、
最大で6キロもの重さになるという。
水の冷たい所、なおかつ流木の陰がないと生息が難しく、
伐採の影響で川底に堆積物ができ、流域が減る
といったかたちでその生息域を狭められている。

写真で見てみたが、これ、ほんまに6キロあるんだろうか?
どうにも信じ難い……てか、本物を一度きちんと見てみたい。
(大きさの比較がない写真だったので、余計)


◆ ◆ ◆

さて。
どの地域における種の絶滅の懸念でも出てくる話だが、
ここタスマニアでも生息地の「分断」が
大きく影響を及ぼしている。

実際にタスマニアの中で実験研究をしてみたところ、
こうした「分断」した環境下の場合、
水生生物らはかなり数を減らしたという。
やはり水環境というものはそれだけデリケートなもの
ということだろう。
対照的に、サソリはあまり数を減らさなかったそうだ。

また、区画の形も問題を発生させる。

一定量の森林を残して周りを伐り払うという選択をした場合、
伐り払った場所から30メートル内部までは
外部の影響を受けるということが判明した。
つまり、60メートル幅の森林を残したとしても、
左右から30メートルずつ影響されるので、
とても「森林を保護した、残した」とはならないのだ。


◆ ◆ ◆

地域の古木も、その地の環境維持に大きく役立っている。
100年生の樹木と450年生の樹木とでは、
圧倒的に450年生の樹木の方が生態環境が豊かだ。
古木だから切り倒して幼樹を植えて更新を、というのは
お門違いというもの。

これは、古木の方が、
動物たちが暮らせるほどのくぼみがあったり、
といったことによる。
樹高も容積も、大きく差がある。

たとえば、
タスマニアにいるコウモリは古木に棲むので
(洞窟は寒すぎてタスマニアのコウモリたちは棲めない)
古木が無いと困る。

古木が棲み処ということでいえば、
オポッサムやフクロウなども同様である。


また、ジェフさんも話していた
外来のユーカリを植えている点についても、
在来ユーカリへの影響はもちろんのこと、
そうした在来ユーカリのもとで暮らしてきた
昆虫や動物にどういう影響が出るのか、ということが
とても心配されている。


◆ ◆ ◆

このほか、昆虫についてもいい話しがいっぱいあったのだが、
ともかく今回はタスマニアデビルの移住計画が心配というのが
管理人の一番の関心事であったので、
この話は割愛。


(タスマニアの森と紙の話、もうちょっとだけ続く)


※;タスマニアデビルの関係報道は、まとめて<続けて読む>に収納。


.
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登録日:2007年 06月 21日 01:28:46

海の新種、川の新種、森の新種

世界でも珍しい淡水ガメ発見される - カンボジア

【プノンペン/カンボジア 17日 AFP】世界自然保護基金(World Wildlife FundWWF)カンボジア(Cambodia)は17日、世界最大級の珍しい淡水ガメがメコン川(Mekong River)の支流で見つかったと発表した。今回の発見により、関係者は、このカメを絶滅の危機から救うことができるのではないかと期待している。写真は見つかった淡水ガメ。(c)AFP/WWF-Cambodia/You PORNY

AFPBB News


21世紀に入ってまだなお、新種が見つかるという
アジアの大河・メコン川の偉大さに拍手。


今月はあちこちの報道で「新種発見」の記事が
目立った月でもあった。
ので、備忘録も兼ねて、それらを軽く紹介していく。


◆ ◆ ◆

5月14日 日経(ロイターより)
新種のハチドリ、南米コロンビアで発見
 http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=STXKB0117%2014052007&g=K1&d=20070514
または
 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070514STXKB011714052007.html

南米コロンビアで新種のハチドリが確認された。
ハチドリは、その美麗さ知られている
アメリカ大陸に棲む小型の鳥だが、
この新種もまた美しい色彩で愛らしいものだという。

だいたい、ハチドリのあの、
花の蜜を吸うという不思議さと軽やかさ、
生きた芸術品のような繊細な美しさは、
やっぱり素晴らしい。

報道では、
>発見した鳥類学者は、生息地一帯が麻薬の原料となるコカの栽培や焼き畑農業の拡大でハチドリの生存が脅かされているとして警鐘を鳴らしている
とのこと。
これ、重要。

15日には毎日も報道があったのだが、
リンクが切れている模様(綺麗な写真つきだったんだが、残念)。
ただ、テキストは日経と全く同じ、出所もロイター通信なので、
まあ、いいか。


◆ ◆ ◆

5月17日 AFP
南極海の深海底で700種超の新種生物を発見 - フランス
 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2225890/1601720

タイトルにフランスとあるが、
場所は南極大陸近くのウェッデル海の深海だし、
研究者はドイツが中心、発表媒体は英国ネイチャー誌という、
なんでタイトルがフランスなのかよくわからない付け方。
ただ、いろいろな新種の写真は面白い。

ニンゲンにとって、まだまだ海洋、特に深海は、
本当に未知の領域なのだな、としみじみ。


◆ ◆ ◆

5月21日
エビ:襲われると青い煙幕、珍種発見 台湾周辺の深海
 http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070521k0000e040030000c.html

エビだけでなく、80種以上もの魚類や甲殻類が
発見されたのこと。
新たな5つの属も発見というから、
海ってスゴイ、というか、
まだまだ謎に満ちているというか、
ワクワクというか。う~ん、海って偉大。

こういうことがわかってきたのも、
台湾の研究者チームが2001年から頑張って研究を続けてきた
おかげでもある。
ありがたや。


◆ ◆ ◆

5月24日 goo経由AFP
タイで新種のカエルを発見=周囲に応じて体色が変化
 http://news.goo.ne.jp/article/jiji/life/science/070523060159.f5y6rpza.html

タイからは、新種のカエル。
DNA鑑定などで、慎重に新種との判断を行ったもの。
生息数は少ない模様。

温暖化やオゾン層の破壊のあおりを受けて、
カエルの仲間はその種の数が激減しているのではないかと
心配されている。
アマゾン辺りだと、ものすごく数を減らしているそうだ。
さらに最近だと、
カエルツボカビなどの影響も心配されているのも
みなさんご存じの通り。


◆ ◆ ◆

と、まあ
本当にいろいろと新種の報道がドッと出た月だったのだけれども、
傾向としては、
海洋や水中に関して研究がまだまだなされていないということと、
発見と同時に絶滅の危機が心配されるような
シチュエーションであるということ。

本当に地球の環境がヤバイってことが、
こうしたいい話からでもビンビンと発信されているというのは、
なんというか、悲しいというか。

とりあえず今晩からできることがあるとすれば、
水を汚したり無駄にしたりしたらあかん、というレベルから、
こういう研究者や環境団体への支援を根強く続けていくこと、
政治にもそうした施策を求めていくこと、など
自分の時間や余裕に応じてできることをやっていったら
いいんじゃないかと思う。

そして、それらをあきらめないこと、が
本当は一番大事なような。

※:各種報道は<続きを読む>に格納。

.
 ... 続きを読む

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登録日:2007年 05月 30日 21:55:10

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プロフィール
山猫通信社 篠宮
山猫通信社
カメでも読める のてのて環境ニュースクリップ
このメモは猫のヒゲ
◆環境カウンセラー兼フリーランスのライター・編集業の「山猫通信社」については、上のHPをぽちっとどうぞ。ブログをみてのご連絡は、sorano_ki@yahoo.co.jpへ。
◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
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