耐震設計偽装事件により浮彫りになったこと(その1)

招く不安の連鎖 耐震データ偽装事件 - 川崎

【川崎/日本 4日 AFP】写真は神奈川県川崎市のマンション、グランドステージ川崎大師、3日撮影。この高級マンションをはじめ、多くの建物が建築士によるコスト削減を目的とした耐震性データの改ざんという今回の一大スキャンダルに巻き込まれている。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA

AFPBB News


<あれから2ヶ月過ぎて>
 この事件も発覚から2ヶ月以上過ぎたが、被害に合われた方々においては、まだまだこれからが大変な道のりであろうと大変遺憾に思っている。速報的な報道のほうは一段落した感があるが、建築雑誌等においては特集としてさかんに取り上げられたりしている。また法制度・審査制度・資格制度などが様々な団体等において議論され制度改正の提案もなされているのが建築界の現状の動きといえる。そのような状況の中で、この事件によって表面にあぶり出されきたこと、これまで一般の人にはなかなか知りえなかったことについてスポットを当ててみようと思う。

<一級建築士>
 まず一級建築士という資格についておさらいしておこう。一級建築士は、昭和25年に建築士法の制定にともない設置され、同法により「国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、設計、工事監理等の業務を行う資格を有する者」と定義される国家資格である。基本的に4年制の大学の建築学科を卒業後2年間の建築実務をもって受験資格ができ、試験は年一回、一次試験の学科(計画・法規・ 構造・施工)及び二次試験の設計製図からなり、年間数千人の合格者がでる。現在推計によると一級建築士は約31万人強程度(財団法人建築技術教育普及センター参考)いるらしいが、更新制度がないので、死亡やリタイヤなどで減少した分や実際に実務についている人間の数は把握できていないらしい。そして一級建築士といっても必ずしも設計の仕事をしているわけではなく、施工をしていたり、建材メーカーにいたり、不動産業であったりと職種は様々なのが実態である。
一級建築士=設計士ということは言えないということだ。

<設計の分業化>
 かくいう私も大学の建築学科に入るまでは、建築の設計をするには、建築の全ての分野に精通する必要があるものと思いこんでいたが、実際は細分化された分野において実務が行われることを知り、少し気が楽になった覚えがある。例えば建築デザイナーは構造設計までは出来なくて良いということである。ただし構造的なセンスは、デザイナーにとっても設計する上で大変重要なことで、だいたいの柱の太さや梁の大きさを想定する感覚は経験によって身に付けなければならないものなのだ。いくら分業化されていようが建築全般を俯瞰するセンスまで失ってはいけないのだ。
 今回の事件においても、計算書の数字を眺めるよりも構造図を見れば、センスのある専門化ならすぐに異常さに気がつくようなことなのだ。経験的なセンスを身につけていない人によって多くの建築実務が行われているとしたら問題であり、チェックを厳重にするとか法制度を改訂するとかの以前の問題なのではないかと思う。そして、実はそのようなことが意外と重要なことなのかもしれない。

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登録日:2006年 02月 02日 18:14:51

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プロフィール
斉藤 友紀雄
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http://nittem.exblog.jp/
1959年生まれ
一級建築士/設計専攻建築士
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