耐震設計偽装事件により浮彫りになったこと(その2)
前回に引き続き耐震設計偽装事件により浮かび上がってきたことを整理してみる。
<建築設計の下請け構造>
今回の報道で少し誤解されていないかと心配しているのが、この建築設計の下請け構造という点である。構造設計といういう建築設計者の存在が、一般の人に知られるようになったことは結果としては良いのだが、どうも構造設計は下請けであるということも一緒に広まりすぎたのではないかと懸念している。確かに構造設計に特化して活動している設計者はプロジェクトの元請けになることは少ないのではあるが、設計事務所によっては意匠・構造・設備と全ての分野を内部で行う事務所もあったり、構造設計者が重要なアイディアを出したお陰で名建築が誕生したことは歴史上ままあることで、構造設計はデザイナーの下請けであるという考えは払拭されるべきである。むしろパートナーと呼ぶべき存在なのである。
また、構造設計以外ではもうひとつ設備設計というのも建築設計の大きな柱である。電気設備や空調などの機械設備が主な分野であるが、環境問題が重要課題になってきている社会においては安全を支える構造設計とともに重要な役割を果たすことが求められている。
<アーキテクトとエンジニア>
このことは特に報道されているわけではないが触れておきたいと思う。海外ではアーキテクトとエンジニアが明確に分かれていて、大学の時点ですでに別になっているところも多いという。アーキテクトとは日本で言えばデザイナー(意匠設計者あるいは統括設計者)的なものであり、エンジニアというのは主に上述の構造や設備の設計者のことである。
ところが日本では一級建築士という制度の下、アーキテクトとエンジニアの教育は入学段階では一緒くたにされながらも、実は徐々に大きく専門化が進み卒業時には完全に分化さ、社会での実務は一級建築士といえども意匠系の人は構造の詳細まではタッチしないし、構造系の人は構造以外のことはやらないというのが実情である。一級建築士だから建築のことは何でもわかっているだろうと思うのは間違いなのだ。これは医師や弁護士とて同じようなものだろう。皆細分化された専門分野の中で生きているのだ。
建築士会などの各団体ではこのような専門化を肯定して特化した資格制度をすでに試みている。今回の事件により、一級建築士の資格更新制度が議論されているが、このような特化した職能を確立させようという動きもまた強いものがある。高度に特化された建築技術の中でもはやオールマイティな建築士になることよりも、専門化された職能の確立とその職能同士のコラボレーションの質がこれからは問われて行く一方その専門技術者を統括する職能もまた必要になっていくであろう。
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登録日:2006年 02月 08日 19:10:07
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- 斉藤 友紀雄
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- 1959年生まれ
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